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決断
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「あら、起きたみたいね」
ドアが開き、女の人の声が聞こえてくる。大丈夫、この声は、知らない人。お母さんじゃない。
なんとなく、うさぎさんの服を握る手に力が入った。
何故だかわからないけど、この人は僕を守ってくれると思った。そんなこと、あるはずないのに。
「あらあら、随分と警戒されちゃったものね……。まぁいいわ。……雪那真白くん、あなたにお話があるの。いい?」
肩を竦めながら困ったように笑った女の人は、少し離れた所でしゃがみ僕を見つめてきた。ベッドに座っている僕の方が高いから、その人を見下ろすような格好になる。
話って……なんだろう……。
「まず、私は四条静香。あなたの担当のお医者さんです。よろしくね。それでね、今雪那くんは病院で入院しているわけなんだけれど、それってものすごーくお金がかかることなの」
女の人――えっと、先生? は、僕にもわかりやすいようにゆっくり話をしてくれた。
どうやら僕は今入院していて、薬とか色んなもののお金をうさぎさんが払ってくれているらしい。
どうしてそこまでしてくれているのか理解できないけれど……。
それに、病院にいるってことはきっとあの人にも連絡がいっているはずだ。
「それでね、いつまでもここにいるわけにもいかないじゃない? 雪那くんもいたくないだろうし。だからこれからどうするか、雪那くんが決めてほしいの」
「え……?」
「こちらが出す候補は、そこのお兄さんのお家に行くか、お母さんのところに帰るか、元いた家に帰るかの3つ。申し訳ないけど、1人でどこかに行くというのはやめてもらいたいわ。今の状態のあなたを、1人にさせておくわけにはちょっといかないのよね」
うさぎさんと暮らすか、お母さんと暮らすか、お父さん達の所へ帰るか。
お母さんとお父さんと暮らすのは、正直もう嫌だ……。
痛いのも、苦しいのも、暗いのも、寒いのも、無理矢理セックスされるのも……もう嫌だ。
だとしたら、うさぎさんと暮らす……?
でも、それはきっと僕が決めていい事じゃない。
「でも……僕が決めるのは……」
「あら、私は“雪那くんが決めてほしい”と言ったのよ? あなたはもう20歳になっているから、自分の居場所は自分の意思で決めていいの。誰もそれを怒ったりなんてしないわ」
自分で……決めてもいいの……?
でも、うさぎさんは迷惑じゃないのだろうか……。僕なんかと一緒に暮らすのは。
僕は何もできない。まともに歩くことすら出来ないのに。
「余計なこと考えてるだろ」
頭の上から声が降ってきた。
見上げると優しい瞳と目が合う。
初めて見るはずなのに、その目にはなんだか見覚えがあるような気がした。
「……たい……」
断られてもいい。
捨てられても、いい。
酷いことされてもいい。
きっと、あの地獄より酷い所などないと思うから。
それに、僕は、この人と――一緒にいたい。
「うさぎさんと……一緒、いたい……っ」
頑張って振り絞った声は、みっともないくらいに震えていた。
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