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死ぬほど帰りたい
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助けてくれ。
助けてくれよハナクソマン。お前しかいねーよハナクソマン。
そうか、普段女に絡まれることがないのはだいたいハナクソが女の相手をしてくれて適当にあしらってくれるからか。いやあいつはあしらってねーわ、適当にうまいこと受け答えして流してさっさと終わらせてくれるわけだ。やっぱ賢いじゃねーかよ。それが俺ときたらこのザマだ。ちょっとマジムリです、世の中どうかしてると思います。もっと媚びを売ってくるような女だったらバサっと切れるのに、こうも悪意のない顔でただの世間話をもちかけてくるような女にウザいから話しかけんなとか、……昔の俺だったら言ってたかもしれねーけど今の俺には言えない。ハナクソが言ってた。適当にしていい人間と悪い人間ぐらい見極めて対応しろって。なんでもかんでも嫌われるようなことすんなって。そう言われてお前が八方美人すぎるんだろ殺すぞって思ってたけど、今なんとなくわかった。
「ふふ、柳くんて人見知りなの?」
「あ?…そうだな。」
俺を狙ってるわけでもハナクソを狙ってるわけでもない、室井先輩がすきな隣のクラスの話したこともない女子は無害だ。無害の人間にウザいとか言ってはいけない、なるほどこれか。これがとりあえずなんか返事しとかなきゃいけない場の空気ってやつか。
「でもこんなところでばったり会うなんて、これも何かの縁だね。学校ではなかなか話す機会もないし…」
「クラス違うし」
「ふふ、確かに!でも委員会は一緒だよ。本当は柳くんとも話してみたいなって思ってたんだ。」
「そっすか………」
「だけどいつも松くんと一緒だから話しかけにくかったの。あ、誤解しないでね、それが悪いとかじゃなくて、2人の仲を邪魔しちゃいけないなっておもって!」
「はあ…いや、べつにただの…腐れ縁だしあいつは」
「うん、でもなんか、2人の世界って感じがするんだよね。」
なんだそれ、やべぇな。ハナクソと2人の世界?はあ、やべぇな?
いやまあ、…まあたしかに、ハナクソといるときは周りを見てないけど、そんなふうに思われるぐらいナカヨシに見えんのか俺たちは。
そりゃー、小林先輩や室井先輩にバレても不思議じゃねーな。
「今日はどうしてカフェにいるの?」
しかし会話もたせてくるなこの村上とかいう女は…。俺の右手にラノベが握られてるのは見えねぇのか?
「本、よみたくて。家じゃ集中できねぇから」
「わ、そうなんだ、ごめんねもしかして邪魔かな?」
「あ、……いや」
バーーーーカ!!俺のば、ば、バーーーーカ!!!!!ここで邪魔です黙って下さいって言えばいいのに!!!く、そ、ば、か、アホか俺は!!
「よかった、ねえコーヒー一杯分だけ付き合ってよ。私は暇つぶしにカフェにきたんだけど、誰かとお話ししたい気分なの」
「そっすか…」
知らねーよあんたの気分なんか!!!コーヒー、スモールサイズ、それ飲み終わるのに何分ぐらいかかるんですか??むり!!
ハナクソがいれば、こんなときにハナクソがいれば!と思う。
なんだ、俺は。
いつもハナクソにこういう役回りをさせてたのか。いやあいつが勝手にやっててくれたんだけど、そうか。
「その本、誰の本?」
「だれって…いうか。あーアレ、なんかアニメの」
「アニメ?柳くんてアニメすきなんだ?」
「はあ、まあ…。アニメとかゲームとか好きだけど。オタクだし俺」
「いいじゃない、好きなものがあることは」
「え、なんで引かねぇの?」
「引く理由がないよ。私だってすきなものあるし、そんなの自由じゃない?」
「そっすか………」
引いてくれよ…そして「この人とは話あわないな」ぐらい思ってくれよ!くそぉ、理解あるタイプの女かよ…珍しいタイプの女はほんとにどうすりゃいいかわかんねーー!
「私はアニメは見ないけど、ゲームならするよ」
「ゲーム?なんの?」
「ホラーゲームとか。ゾンビ出てくるやつとか、格闘ゲームとか!」
「まじで、意外だな」
「そう?」
「うん。漫画もアニメもゲームも知らねーって感じだと思ってた」
「そんなことないよ、うちには弟がいて、弟がゲームすきなの。一緒にやってるよ!」
「へーー。ハナクソも俺がゲームすっから一緒にやるようになったな、そういえば」
「え、っと?誰のこと?」
「あー、………涼介。」
そうか、ハナクソとか言っても隣のクラスの女には伝わらねぇか。そりゃそうだよな。
「涼介って、もしかして松くん?」
「そう」
「柳くん、松くんのこと下の名前で読んでるんだ?なんだか可愛いね」
「は?!なんで、普通だろ」
「仲悪いっていいながら、腐れ縁でいつも一緒。しかも下の名前呼びって…可愛いよ」
「…………そっすか」
「やだ、もしかして照れてるの?」
「…なあ、あんたなんなの?誰にでもそうなの?」
「ふふ、誰にでもそうじゃないよ。柳くんは話しやすいから、ついつい。」
話しやすい!?俺が!?
正気かこの女…。ちょっと引くレベルだわ。
俺今日何回そっすかって言ったと思ってんだろ。その度にうまいこと話もってきやがって…。
「やさしいね。柳くん」
「はあ?」
「普段あんまり女の子と話さないでしょ。」
「まあ…」
「本当は本よみたいよね。だけどこうやって付き合ってくれるし」
「………。」
「松くんがラインで言ってた。柳くんはやさしいって。その通りだね!」
あーーーいーーーつーーーー!
なにを言ってんだよ!俺のしらないとこで!!
馬鹿じゃねーの?!なんで俺のことが話題にでるんだよ!!!
顔が赤くなりそうだ、やさしいって?俺が?ハナクソがそう思ってそれをこの女に話したわけ?なんだよそれ、くそ、くそ、…!
「いや、そんなこといわれても普通に反応に困るんたけど…」
顔、あつい。
恋人が、他人に自分のことを話していると知るのはこんなに照れるもんなのか。こないだ俺が小林先輩と室井先輩に暴露したときもハナクソは恥ずかしいって言ってた。その意味が今、なんとなくわかったわ!
「そうだよね!ごめんごめん!…あはは、…。ごめんね、ちょっと今落ち込んでて、余計なこと言っちゃったかな」
「え、いや…」
今、村上さんの話なんてほぼ頭にはいってこない。照れを隠すようにキャラメルフラペチーノを口に入れて、適当な返事を返した。…俺はハナクソのことを一瞬たりとも忘れられないのか、アホか、ほんとに患ってる!
「…ねぇ、聞いてくれる?私の話」
あ?なに?なんだって?ごめん今ちょっと別のこと考えてて空気よめてなかったわ。
「はあ、どうぞ」
まあ受け答えするよりかは、話してもらう方がマシだ。相槌うっときゃいいんだから。
俺のキャラメルフラペチーノの量、半分。村上さんがコーヒーに口をつけた回数、二回。
はやく話、おわんねーかな。
なんかもう、今あいつに会いたくて仕方なくなったわ。夜、電話して呼び出して、癒されてぇ。
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