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夜の10時。
寝るにはまだ早いが、常識的ではない。
誰だよこんな時に…
何故か、確認もしないで戸を開いた。
チェーンも全て外して、多分今、俺は迷惑そうな顔をしてると思う。
「どちらさまですか………」
「ゆう!!」
完全に扉を開いたら…
そこには汗だくで、息切れしてる智也が立っていた。
「とも…や?」
「ゆう…っ……話…きいて…」
走ってきたのだろうか?
すごい息切れしてて、苦しそうだった。
部屋に上がって、お茶でも出したいんだけど、それより今すぐ話を…したいと思った。
「話って?」
智也と会えて、嬉しい…
けど、まだ複雑な気持ちだ。
嬉しいけど、素直に喜べない。
だから冷たくしてしまう。
もっと普通に話をしたいのに、ちゃんと話し合えば分かり合えると思うのに…それができないのは、散々傷付けられたからだろう。
「ごめん。本当にごめん。ごめんなさい…」
智也から出てきた言葉はそんな謝罪の言葉だった。
俺は別に謝ってもらいたいんじゃないのに…
「俺は……ゆうを傷付けた」
「うん…」
俺は…言い訳を聞きたいのに…
「だからさ、俺の事はもう忘れて」
なのに、どうしていつも智也はこうなんだ。
何も言わない。
何も言わずに自分だけ、どこかに行こうとする。
まるで、俺には関係ないって言ってるみたいで…
『話し合えば分かり合える』
その時、橘さんの言葉を思い出した。
そうだよ、感心な事が言えてないのは俺も同じだ。
このまま黙ってたら何も変わらない。
「智也はなんで、俺の前からいなくなろうとするの?」
心臓が壊れそうだ。
ここで、嫌いになったからなんて言われたらどうしよう。
でも何も言われないよりは、マシなはずだ。
恋人…ではなくなったけど、それでも好きな人の事は、なるべくいい事でも悪い事でもいいから知っておきたい。
でもそんな俺の質問に智也は…
「先に居なくなったのは、お前だろ」
と、ドスが効いた低い声で、放った、冷たい態度でそう答えた。
そこにはさっきまでの、必死で申し訳なさそうな顔じゃなく、本気でキレた時の顔だった。
「居なくなったのはお前だろ。そりゃ確かに俺はすっげー悪い事したよ。でも、居なくなったのはお前だろ…何も言わずに、勝手に出て行って、文句あるなら言えばいいのに、お前は逃げただろ」
なんだよその言い方。
その目は、なんだよ…
「俺が…悪いって言いたいの?」
本当は俺も謝りたかったのに、こんな喧嘩腰になる。
怒っていいのはどっちなんだよ。
俺だって悪い事したけど、本当に悪いのは…俺じゃないだろ?
俺なのか!?
「毎日毎日、話し掛けようと努力してんのに、無視して?温くなったコーヒー出せば怒鳴られるし?セックスだって…俺をオナホみたいに思って!?
誕生日も、糞もねえのに?
なのに、俺が悪いのか!?
あの状況で俺が口出しできると思ってんのか!?」
これじゃまるで俺が逆ギレしてるみたいじゃん。
智也は、何一つ俺の事をわかってないんじゃん。
なのに何謝ってきたんだよ。
「あんな……あんなヤケクソな関係なのに、俺は逃げる事も許されねえのか?」
ずっと、苦しめって事?
俺も、楽になりたいって思っちゃいけないのか!?
「逃げて…すぐに違う奴に拾われたからいいよな…お前は」
久々に大声を出したから若干息切れ気味のなか、小さな声で智也はそう言った。
え?拾われた?
「今まで、ごめん。やっと聞けたよ…だから俺の事はもう忘れろ」
「えっ……まって「堀川ぁ?どうした?近所迷惑考えろよ……」
背中を向けて歩き出そうとした智也の腕をつかもうとしたら、部屋の中から橘さんが出てきて、それを見た智也が切なさそうに笑って、
「お前には幸せにしてくれる人がいるんだから、俺の事は忘れて」
そう言い放ち、歩いて行った。
その光景が、俺の誕生日のあの日に重なって、声も出ず、ただ涙だけが溢れていた。
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