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番外編 お兄ちゃんの一日。⑤
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「ただいま。」
5時30分、今日は早めの帰宅である。
この時間帯は基本誰も帰って来ていないため、特に挨拶をする必要はないのだが。
遥遠は自室に着くと制服からスウェットに着替え、勉強机に向かい課題を開いた。
チッ…チッ…チッ…チッ……
それからどれくらい経っただろうか。
時計の音だけが響いていた部屋に玄関の方向から声が届いた。
「ただいまー」
どうやら彼方のようだ。
遥遠は開いていた教材を閉じペンを置くと、彼方の元へ向かった。
「お帰り彼方。今からご飯作るから、先に風呂、入っておいで。」
「あ、今日は俺が作る。先週ずっと兄さんが作ってくれてたし、俺がやるから兄さんは風呂入って来なよ。」
靴を脱ぎながらそう言う彼方。
遥遠は驚いたように目をぱちくりさせると、嬉しそうに笑って言った。
「そう?ありがとう。だけど彼方、部活で疲れてるだろ。大丈夫だから入っておいで?」
「でも…」
「大丈夫だよ。」
「…うん、じゃあそうする。今日ご飯何?」
「そうだなぁ…何がいい?」
「んー…カレーが食べたい。」
「了解。ほら、タオル持ってきてやるから着替え取っておいで。」
「うん」
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「兄さん、出来た?」
「ん?あ、あがった?まだかかるからもう少し待ってて。」
頭を拭きながら彼方が肩越しに遥遠の手元を覗き込む。
「何か手伝おうか?」
「じゃあお皿出しておいて貰える?」
「あとは?」
「あとはいいよ、課題やってきな。」
「ん、わかった。」
その後 遥遠は彼方と晩御飯を食べ食器を洗い、午後8時頃には粗方のことが片付いたので風呂に入ることにした。
「はぁ……気持ちぃ…」
チャポン…
蛇口から垂れた滴が音を発てる。
…ある意味入浴時間は遥遠にとって唯一休める時かもしれない。
学校では生徒会長として、家では兄として、決して無理をしている訳ではないが、やはり疲れはたまる。
それ故遥遠はいつも少し長風呂なのであった。
風呂を出る頃には、疾うに9時を過ぎていた。
部屋に戻るとタオルを首に掛けたまま遥遠は机の前に腰掛けた。
ドライヤーを使わないため、髪が乾くまでの1~2時間自主学習に取り組む。
これまで学習を一日たりとも欠かしたことのない遥遠は決まって寝るのは11時頃なのだが、
生徒会の仕事があるときは深夜1時になるときもあった。
区切りがついたのだろうか、カチッと手元のライトを消すと、遥遠はベッドに横になり目覚ましがきちんとセットされているのを確認してから眠りについた。
こうして、永井 遥遠の一日は幕を閉じる。
「そしてまた、数時間後には新しい一日が始まるのであった…
ナレーションは日向 明日香がお送り致しました。」
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「おい彼方、お前の兄ちゃんいっつもこんな感じなのか?これ逆につかれねぇ?」
「俺も見ててこっちが疲れるし、心配なんだよ。でも本人は慣れてるみたいだから」
「ふーん…」
「興味ないなら訊くなよオッサン。」
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