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私の感情-牛狐-
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いつ頃からやろう。
私に“感情”というものがなくなったのは。
喜ぶことも怒ることも哀しむことも楽しむことも忘れてしまった。
友達の前で笑顔を作っていても心は全く楽しんでいない。
勉強も遊びも楽しくない。
恋愛という“感情”も忘れてしまった。
私にはもう“感情”というものが戻ってこないやろう。
「なあなあとわぽん」
声をした方を見る。
「なんや、牛沢か」
「な、酷いんじゃない?」
ショボンとした顔をしているが、多分演技やろうな。
「それでなんですか?」
「とわぽんの笑顔ってなーんか不自然だよな」
そんなの全然気にしていないようやったのに。
「そんなこと…」
「ないって言い切れる?」
両肩を掴まれ、真っ直ぐに目を見て言ってくる。
「俺、とわこが好きなんだ」
それって男が男をすきってことか。
それ以前にすきってなんやっけ。
でも急にちゃんと名前を呼ばれたら少しドキッとした。
なんでやろう。
「だからとわこには心から笑顔になってほしいんだ」
「…私には“感情”というものが分からへん。せやから牛沢が言ったすきも分からへん」
「好きっていうのはこういうこと」
私の唇に暖かな感触がする。
その感触はすぐに離れていく。
顔に熱が集まるのが分かる。
このもやもやした“感情”はなんや。
「▼とわこは“照れる”を覚えた」
「なんで某ゲーム風なんですか」
「とりあえず今のとわこの感情は多分、照れるだと思う」
「てれる?」
「そう照れる!」
牛沢は人差し指を立てて得意気に言う。
「私は牛沢と一緒にいたら“感情”を取り戻すことが出来ますか?」
ふわっと包み込むように抱きしめられる。
「俺がとわぽんに“感情”を取り戻してやるよ」
「あ、もう1回名前で呼んでくれへん?」
牛沢は驚いたような顔をしている。
かと思ったらまた抱きしめてくる。
それから
「とわこ、好きだよ」
耳元でいつもより声を低くして囁かれる。
俺の中に一つの“感情”が生まれた。
「私も牛沢が好き」
11.28
私の感情-牛狐-【完】
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