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恐怖の視線
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俺は、兎羅を投げるように放つ。
投げられた兎羅の身体は、壁に激突する。
ハロへと足を進めようとした俺の足首が、ぐっと掴まれ、引かれた。
バランスを崩した俺は、床に転倒した。
黒マスクの手が、ハロの頸動脈に触れる。
ふっと息を吐いた黒マスクは、ハロの足に巻きつく拘束具を外した。
ハロの身体をシーツで包み、抱え上げた。
「何してやがんだよっ!」
黒マスクに声を放ち、起き上がろうとした俺の上に、兎羅は馬乗りとなり、動きを制した。
兎羅は、両手で、俺の胸を押さえつけた。
「がっ………」
威嚇するように、諦めろというように、兎羅は、俺を見下げ、睨みつけていた。
兎羅の反抗など、大したことはない。
俺は身体を捻り、兎羅の身体を跳ね上げ、そこから、這い出した。
黒マスクに歩み寄ろうとする俺を、兎羅は、全身で止めにかかる。
睨みつける俺の視線に、兎羅は、唇で文字を紡ぐ。
『諦めなよ』
俺を射ぬくような鋭い瞳で、兎羅は、じっと俺を見ていた。
「見んなっ…そんな眼で…っ、見るなよ!」
じりじりと俺の胸の中を暴くように、突き刺さるような兎羅の視線。
胸に感じる痛みに、俺は、小さく声を放っていた。
ハロのあの闇のような真っ黒な瞳で見つめられると、言い知れない罪悪感が心を占めた。
兎羅の喉を潰したのは、お前だろ?
声を奪ったのはお前だろ?
否定される恐怖から、兎羅の言葉を奪ったのだろう?
そう、囁かれている気がした。
兎羅の声を聞くのが怖かった。
兎羅の言葉を聞くのが怖かった。
兎羅の、拒絶の言葉を聞くのが…怖かった。
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