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ただの臆病者 <Side兎羅
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兄さんを、取り戻したかった。
兄さんは、恐怖から、僕の喉を潰した。
本当は、凄く後悔している事を知っているんだ。
僕の声が聞けなくなった事を。
僕を傷つけてしまった事を。
ただの臆病者なんだ。
僕が消えてしまうのが、怖いだけ。
離れていってしまうのが、怖いだけ。
取り戻すためには、兄さんが買った奴隷が、どんな奴なのか、知る必要があった。
何もかにもが違うなら、諦めもついた。
でも、綺麗だと褒められた瞳の色が、僕と一緒だった。
怖くて抱けなくなったから、僕の残像を追って、同じ瞳のハロを試した。
でも、抱けば抱くほどに、僕との違いを感じる。
髪の色も、肌の感触も、話す声も、違う。
当たり前だ。同じなのは瞳の色だけ。
いつの間にか、その同じ瞳で、僕を思い出すのが怖くなる。
瞳を隠してまで、ハロを抱く。
兄さんは、僕を抱けない代わりに、ハロを抱いた。
代わりにされるハロに、僕は……、嫉妬した。
兄さんから、ハロを奪ってしまおうかとも、思った。
そうしたら、兄さんはもう一度、僕を見てくれるんじゃないだろうか、と。
――俺のもんに手ぇ出してんじゃねぇよ。
そう言って近づいてきた兄さんは、ハロを睨みつけていた。
兄さんは、″ハロに″……、嫉妬した。
兄さんは、飲み込もうとしなかったけど、僕は兄さんが好きだった。
どんなに酷く扱われたって、声を奪われたって、僕はちゃんと、愛してた……。
ううん、違う。……愛してる。
″嫌いだ。傍になんて、居たくない″
そう、否定されるのが怖くて、僕の喉を潰したけど、僕は否定なんてする気は、なかったんだ。
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