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じゅうはち。
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*
黒板に当たるチョークの音。
カッカッとリズミカルに書かれた白い文字は、バランスが整っていて綺麗だ。
"掛川 寧々"
"熱月 春真"
「……えーー。今日から短期間だけ、この学校に在籍することになった2人の転校生を紹介する。」
生真面目担任、メガネこと竹田先生は少し戸惑った顔で2人に目線を向ける。
「掛川寧々です。短い間ですが、どうぞよろしくお願いします。」
「……熱月春真です。よろしくお願いいたします。」
「「……………。」」
騒然となるクラス。
教室にいる生徒全員が、2人のオーラに言葉を失っていた。
兎代の近くに座っている山内も、2人の容姿に呆気にとられている。
「じゃあ2人の席はアイツらの隣な。
安土と伊月。お前たち彼女たちと知り合いなんだから、親切にするんだぞ。」
竹田がそう言った瞬間、バッッ!!とクラスメイトの視線が一気に兎代達の方へと向いた。
「…………………。」
頭を抱える兎代。
ただ笑っている伊月。
「朝の空席は、これが目的だったか……。」
「え?何が?」
兎代の隣に座る寧々、伊月の隣に座る春真。
伊月達が廊下側の後ろの席、そこから斜め前に沿った窓側の席に、兎代達は座っている。
彼らからすれば、兎代達の席は丸見えだ。
(っていうか、あの2人が隣同士って……。違和感しか感じねぇ……。)
ーーー学校に登校した時、
何故か隣に座るはずの人が別の席に移動していた。
『??』
嫌な予感がしてホームルームを迎えたが、まさかその予感は的中するとは……。
(普通ここまでするかぁ……?そう思うとある意味、コイツの行動力ってすげぇよな……。)
そう思って何気なく寧々を見る。
彼女は楽しそうに鼻歌を歌って笑っていた。
その姿はまるで、はしゃいでいる子供のよう。
ーーーそれを見て、兎代はふと感じた。
その思いは自然に言葉となって、無意識に口から出る。
「……なんかお前。初めて会った時とだいぶ印象が違うな。」
「へ?」
その言葉に寧々は、目をパチパチと瞬かせた。
兎代は思う。
最初は礼儀正しい、ちゃんとしたお嬢様かと思っていた。
だけど接していていて、分かったことがある。
いつもは陽気で天真爛漫。
そして熱月春真が関わるととてもネガティヴ。
興奮すると変な訛り口調になるし、普通に接してみても高貴な性格はあまり出てこない。
最初の姿とは全然違う。
「……あーー。それは……アレなのアレ。……建前ってやつ!」
そう言われると、寧々は顔を正面に向け、どこか気まずそうに喋り始めた。
「お父様に教わったの。
"初めの挨拶は礼儀正しくありなさい。
信頼できる者には本物を、できない者には偽物を見せよ"ってね。
まぁ結局、最後は兎代さんのもどかしさにキレて、本物の私を見せちゃったけど。」
あはは。と彼女はどこか空っぽな笑みを見せる。
「……でも今は違うから。貴方が本当に信頼できる人だから見せてるの。
だから今ここにいるのが、本物の私!」
そう言って、へらりと笑って兎代を見る寧々。
その言葉に納得しながら、兎代は頬杖をつく。
(だからあの時、すっげぇ丁寧な挨拶だったんだな。)
ーーー思い返す、あの時の言葉。
それが言い終わると、寧々は再び黒板の方へと目を向けた。
兎代も同じく、黒板の方へと顔を向ける。
そして彼は会話を違うのものに移した。
「それで?これからどうするんだよ。何かいい作戦でもあるのか?」
兎代がそう言うと、寧々は企みのある笑みで答える。
「フフフ、あるよ……。」
彼女は兎代の耳に手を当て、ゴニョゴニョと口添えする。
それを聞いて、兎代は呆れた顔になった。
「えぇ……。そんなので本当に大丈夫なのかよ。」
「分からない。
だけど、やってみる価値はあると思う!」
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