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さんじゅういち。
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ーーーーー
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白いカーテンがフワリと舞う。
穏やかな日に包まれて、真っ白な病室は優しい空間を作り上げていた。
「……寧々様。」
「んーー?」
寧々の頭を撫でながら、春真はゆっくりと喋り始める。
「……この前は、本当にすみませんでした。
貴女に、こんな酷い怪我をさせてしまって…。」
そう言って、春真は痛々しく寧々の腕を見つめた。
寧々は目を閉じながら、緩く首を振る。
「んーんー。平気。
すごい都合がいいのかもしれないけど、あの事件があって私は良かったと思ってる。」
撫でる春真の手を、寧々はそっと握った。
「だって、春真が私自身を見てくれるようになったんだもの。このくらいの怪我、全然大丈夫。」
「寧々様……。」
「むしろ大変なのは春真の方だよ。
まさかこんなに怪我が酷かったなんて……。」
寧々は元気がなさそうに眉を歪めると、春真に向かって頭を下げる。
「ごめんなさい、春真。私のせいで、こんな怪我をさせてしまって……。」
春真も緩く首を振ると、
そっと寧々の頬に手を添えた。
「こんなの慣れてますから、平気です。
それで貴女を守れたのなら、安いものです。」
「春真……。」
「今回の事件で、私は痛いほど分かりました。
戦いよりも、もっと大切なものがあるという事に……。」
お互いにジッと見つめ合う。
寧々の紅葉の瞳を見て、春真は言葉をこぼした。
「……私は、貴女が好きです。
友情の好きなんじゃなく、恋愛の好きという意味で。」
その言葉に寧々は目を見開く。
春真の言葉の意味を理解してきて、段々と頬を染める。
「だからこれからは恋人として、貴女の側にいてもいいですか?」
「!!」
白いシーツに、ポトリと暖かな雫が落ちる。
愛の告白に、寧々はポロポロと涙をこぼした。
手で涙を拭いながら、何度も頷く。
「うん……!うん……っ!」
寧々がそう言うと、春真は彼女の頬を優しく包んだ。
ジッと互いに見つめあう2人。
やがて春真の美しい顔は、そっと寧々の唇へと導かれていったーーーー。
ーーーーーー
ーー
あれから数週間後、
春真は無事に退院して寧々を迎えに来た。
最初は1週間という約束だったが、
寧々が月華のいない状況だった為、なんやかんや1ヶ月、兎代達は寧々と一緒に住んでいた。
トランクケースを持って、寧々と春真はお辞儀をする。
「今回は私達のことで迷惑かけてごめんなさい。」
2人は顔を上げると、幸せそうな顔で笑った。
「兎代さん達のおかげで、私は春真と心が通じ合えた。本当にありがとう。」
「……別に、俺は何もしてねぇよ。」
寧々のお礼の言葉に、兎代は頭を掻いてそっぽを向く。
隣で伊月はその様子を見て、ニヤニヤと意地悪な顔で笑った。
「そんなこと言って、本当は照れてるんでしょう?若様。」
「バッ……!?そんなことねぇよ!!」
真っ赤になった兎代を見て、寧々は指を口に当ててクスクスと笑う。
春真が寧々に声をかけた。
それに寧々は頷いて、兎代達を見る。
「じゃあ迎えが来たから、私達は行くね。」
「おう、またいつか会おうな。」
その言葉に寧々は意味ありげな笑みをこぼした。
「フフッ…。意外にすぐ、会えるかもね?」
「??」
「じゃ、伊月さん!兎代!またね!!」
最後兎代を呼び捨てにして去ろうとする寧々に、兎代は目を丸くさせて驚く。
「ちょっ、お前…なに呼び捨てにしてんだよ!!」
どんどん遠くなっていく寧々は、後ろ姿で手を振りながら兎代に聞こえるよう叫んだ。
「いいじゃん、私達同い年なんだし!
それに兎代も私のこと寧々って呼んでもいーよー!」
「っ!?」
寧々の言葉に、兎代は戸惑いで声が出ない。
そして寧々達は待っている車に乗り込むと、そのまま勢いよく走り去ってしまった。
取り残される、兎代と伊月。
ひゅうっと小さな風が閑散と吹く。
「あいつ……、一体何なんだ。」
「面白い方でしたね。」
お互い一言ずつ感想を述べると、兎代は空に向かって目一杯背伸びをした。
「あーー、厄介な奴がいなくなってくれて清々したわ。疲れたからマンションに戻ろうぜー。」
「そうですね。」
この日はちょうど休日の土曜日。
明日も休みだし、今日はたくさんダラダラしようと、兎代は考えていた。
マンションに戻り、カードキーで部屋を開ける。
靴を脱ぎ部屋に行こうとしたら、突然伊月に手を掴まれた。
「えっーーーーー!?」
驚く間もなく、兎代は伊月に唇を塞がれる。
唐突なキスに、兎代は戸惑いを隠せない。
「んぅっ…!?……っ、はぁ……いづきっ!!」
キスをされながら、
兎代は伊月の部屋へと導かれていった。
広いベッドに押し倒され、思わず目が潤む。
覆い被さる伊月の顔は、明らかに楓へと変化していた。
兎代を射抜く深緑の瞳は、欲に濡れている。
「……兎代。」
ツツッと、楓は厭らしく兎代の胸を撫でた。
「俺の約束、忘れてないよな?」
「っ!?」
その言葉に、兎代はハッと目を見開く。
兎代が動揺した様子を見て、楓は笑いながら彼の唇に触れた。
「ずっと1ヶ月、我慢してきたんだ……。
その代償、もちろん取ってくれるんだよな?」
「まっーーーーーーー
"待て"という兎代の言葉は楓の唇に吸い込まれる。
ーーーそして兎代は抵抗することが許されず、楓の好き勝手にされるのだった……。
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