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望
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―満月か…。
頭上で明るく輝く月を見て、和泉は項垂れた。
これから家路につくのだが、どうにも気が重い。
その原因は…
嫁の莉緒だ。
どうやら、月と同じ周期で、気分が盛り上がるらしい。
そして最近は周囲の
『―2人目は?』
という後押しの声もあって、俄然ヤル気を出してきているのだ。
―そんでもなぁ
悪いけど、オレはもう…。
嫁に、というか
あの丸み、柔らかさには、違和感しか感じない。
―オレからしたら、メチャメチャ当たり前のこと、やねんけどなぁ。
頭を過った男の影に、一瞬、危うく心身が反応しかかったが、誰かが吐いた紫煙のお陰で、何とか踏み留まれた。
自分のこの変化は、嫁からすれば、立派な裏切りだろう。
―静にしか感じへん、なんて言うたら
ニッコリ笑った顔のまま、手早く簀巻きにして、関空沖へドボン、やろな。
莉緒がたまに見せる行動力と直感力は、凄まじいものがある。
―あれは、コワい女や。
息子を生んで母となり、自分には無い経験値が上がった分、敵に廻したくない度合いが年々増している。
―悪いんは、全部オレやねん。
静に被害が及ぶのは、何としても避けたい。
それに、あの2人が、ガチでやり合ったら…。
血を見るよりも恐ろしい、寒々とした光景を幼い息子も、見てしまうに違いない。
―それだけは、避けなアカン。
和泉はゾッとしない想像を頭から注意深く追い払った。
―とりあえず、今夜や。
あの誘いを、どないにかわしたもんかなぁ…
思案しながら、玄関を開けた。
―へ?
真っ暗だ。
人の気配が全くしない。
―一体、何が起きたんや?
リビングに慌てて駆け込むと、電話の音が鳴り響いた。
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