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望Ⅱ
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「も、もしもし?」
和泉は受話器に飛び付いた。
「あぁ、やっと捕まったわ。会社へ電話したら、今帰ったとこや言うし、スマホ鳴らしても、出えへんし…一体どないなってんねんな?」
受けた電話は、莉緒からではなく、実家の母親からだった。
「何やオカンか。こんな時間に、一体何の用やねん!?」
少しドスの効いた声で、小言が続きそうな空気を素早く遮る。
「ああ、そやった。…ええとな、落ち着いてよう聞いてや。悠真くん、入院やって。」
「はぁ?入院っ!?」
今朝見た息子は、元気そのものだった。
それが何故!?
にわかには信じられない気持ちが、舌をもつれさせた。
「な、なん、何があってん!?」
「なんや、公園のジャングルジムから落ちたとかでなぁ。」
「なにっ!?」
一気に血の気がひいた。
「あぁ、心配せんでも、本人さんは、ちょっと頭にタンコブが出来た程度で、元気にしてるみたいやから。」
「そんでもオカン、今、入院て…。」
「ああ、それな。大事をとって、経過観察いうやつらしいわ。落ちてからちょっと吐いた、て莉緒さんが言うたら、なんやそないなってしもたんやて。小さい子のことやし、打ったんが頭やから、万が一のことも…なんて言われたら、恐ろしいて断れへんかってんやろ。可哀想に。」
大体のことは解った。後は入院先だ。
「オカン。それ、どこの病院や?」
「あんたんとこから歩いて15分くらいの○岡こども病院やって。今から行くにしても、もうじき消灯時間やし。莉緒さんのスマホ、そろそろ充電が無いんやて。それで、私があんたに連絡するように、頼まれてん。」
「そうか、わかった。明日、朝イチで行ってみる。助かったわ、おおきに。」
「ええんよ。ほな、また何かあったら、連絡してくるんやで?」
「ああ、ほなまたな。」
受話器を置くと、全身の力が抜けた。
それが、安堵からなのか、何なのか、判らない。
―わからん、けど。
良かった…。
あの子が無事で、ホンマに助かった。
和泉はしみじみ、そう思った。
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