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ここへ来て何日経つだろう
とても居心地がいいと思えてしまうのを必死に打ち消した
だって、怪我が治ったら俺はまた・・・
そんな日を思うだけで心が凍りそうになる
朱雀は俺を甘やかせ過ぎる
そして過保護だ
いつしか俺もそんな朱雀に甘えていた
優しいのをいい事にね・・・でも、それだけ?
「雪・・・」
曇り空から白い雪が降って来た
今まで雪はただ冷たいものだとしか感じなかったけど、この部屋から見える雪はとても優しくて綺麗
そう言えば俺が拾われた日も雪だったのかな
目が覚めたとき、雪が残っていたしね
いつまでこんな生活を続けられるんだろう
傷はもう痛まないし、食事も出来る
それが辛いと思えてしまう
「ギター・・・」
こんなにいいギターをもらっても俺には使いようが無い
元の生活に戻ればギターはまた弾かないだろうしね
もうバンドは懲り懲りだ
みんな演奏の事など考えていない
ただ甘い蜜を吸いたいだけ
そんなやつらにバンドを語る資格は無い
「・・・・・・・やらせてあげる」
その言葉を聞いた時、朱雀はすごく怒っているように見えた
俺には普通だと思っていた事だから驚いた
確かにやられるのは嫌だけど喧嘩もしたくない
でも、朱雀の言葉を聞いて今までの自分が情けなかった
体なんてどうでもいいと思っていたのにね
「プリン・・・」
一番好きな食べ物
ここに来るまでは月に一度の楽しみだった
それが今は毎日食べさせてもらえるしとても美味しい
まるで夢のよう
「だから・・・もう俺の事は」
急に寂しくなった
俺の事はもう構わないで・・・と、どうして言えないんだろう
ずっとここには居られないのに追い出されるのが嫌だから?
「楓、プリン食べるか?」
「うん」
「駅前のカフェで売っていたんだ、ホワイトプリンらしい」
「真っ白」
「雪みたいだね」
「うん」
俺には食べる資格が無いような真っ白なプリン
「どうした?スプーンは渡しただろ?」
「うん」
一口食べると口の中でとろけた
すごく美味しい
「美味しい?」
「すごく」
「よかった」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
なんだか会話が出て来ない
嬉しいのに悲しい
美味しいのに味かわからない
「雪が降ってるね」
「うん」
「今年はこれで2度目だな」
「積もるかな」
「どうかな」
「雪だるま作りたいな・・・でもそんな物を作る年でもないし」
「じゃ、怪我が治ったら雪だるまが作れるような場所に行こうか?」
「えっ?」
「・・・・・・・・・・・・いや」
「うん」
期待するような言葉は言わないで欲しい
一瞬嬉しかったけど、きっと冗談に違いない
「そうそう、枕元にこれが落ちていたよ」
「ありがとう」
そう言ってピアスを渡してくれた
慣れた手つきでピアスをはめると朱雀が言った
「いくつあいてるのかな?」
「数えた事無い」
「自分で?」
「うん」
「そうか」
ピアスの数なんてもう数えていない
あけた時の痛みも忘れた
「そう言えば舌にも」
「うん」
「痛そうだ」
「痛くないけどね」
「でももう体を傷つける事はして欲しくないな」
「と言うかもう開ける場所もないから」
「笑えない冗談だ」
そう言って2個目のプリンを差し出した
それが当たり前かのように
「どうして朱雀は俺に構うの?」
「どうしてって・・・」
「偶然拾ったから?」
「拾ったと言うんじゃない」
「でもそうでしょ?」
「私はこう考える事にしたんだ」
「?」
「私には楓が必要で、楓には私が必要だった・・・だから神様が必然的にこうしてめぐり合わせてくれたとね」
「朱雀には俺が必要?」
「勝手にそう思い込んでいるだけだ、すまない」
「・・・・・・・・・・・・・・・俺もここでの生活が楽しい」
「えっ?」
「だから辛い・・・怪我がよくなる度に心が痛い」
「楓」
「ごめんね、困らせるつもりは無かったんだ・・・怪我が治れば出て行くよ」
その言葉を言った後、心が痛んだ
すごく・・・
「困る訳ないじゃないか?それは本当の気持ちか?」
「・・・・・・・うん」
「よかった」
よかった?
どうして?
迷惑じゃないの?
朱雀の言葉に戸惑いながら窓の外の雪を見つめていた
白い雪はまるで羽のよう
白くてまるで天使の羽のように見えた
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