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知らなかった一面〜椎名side〜
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「椎名、少しいいか?」
部室に向かう前に一旦職員室に楸先輩と向かっている時、他クラスの友達に呼び止められた。
せっかく楸先輩と二人っきりだったのに・・・。
「どうしてこのタイミングで来るんだよ!」
「なんで怒ってんだよ!?」
「何の用だよ!」
「だからなんで怒ってんだよ!?」
友達はキョロキョロと辺りを見る。
「椎名、ひ・・・三城さんは?」
「優樹なら部活行ったけど」
「三城さんって部活入ってたの!?何部!?」
「・・・茶道」
友達の食いつき具合がすごい。
優樹って本当に男からモテるよな。
まあ 見た目あんなだし、馬鹿で天然だけどお人好しでいい奴だからなんとなく分かるけど。
「茶道部かぁ。茶道部って人数多いの?」
「・・・おや?」
パッと声がする方を見ると、
深緑色の和服を着た人がいた。
一瞬卵が孵化するのかと思った・・・じゃなくて、
外部から教えに来てる人か?
「茶道部に興味あるの?」
「えっと・・・」
「あっ、いきなりごめんね?茶道部部長の茶山です。
よろしくね。楸、こんにちは」
「こんにちは、茶山」
外部の先生じゃなくて部長だった。
そして楸先輩の表情は至っていつも通りだけど微妙に声のトーンが低い。
(楸先輩、この先輩の事が苦手なんだ。)
楸先輩、意外に顔に出ないタイプなんだな。
茶山先輩って敬語が抜けた夏目先輩って感じで似てるけど・・・夏目先輩とは仲いいよな?
「茶道部って部員 何人ぐらいいるんですか?」
「自分含めて全学年で10人いるよー」
「へぇ!でも茶道を10人でやるってなったら人数多いんじゃないですか?」
「でも火曜日と木曜日に分けて部活をしてるから多くないよ。それに今日は自分と他に1年が1人しかいないから時間もあるし。もし良かったら見学にどうぞ」
行ってみようかなぁ〜。と考える友達の隣で
オレと楸先輩は固まった。
「茶山、今日ってお前と1年生1人しかいないのか?」
「うん、そうだけど?」
「ちなみにその1年って、三城 優樹ですか!?」
「そうだよ。みしろ・・・三城君とお友達?」
「はい。あともう1つ、今日 部室に部員じゃない人が来ませんでしたか!?」
「君って彼らとも友達なの?」
・・・彼『ら』?
「・・・茶山、客は1人じゃないのか?」
「お茶点れたのが9つだったから・・・お客さんは8人いたよ」
そう聞いた瞬間、オレの脚はその場を力一杯蹴って駆けていた。
「楸先輩、すみません!オレ 行ってきます!」
「っおい!椎名っ!!」
オレは急いで茶道部の部室に向かう。
「優樹、無事・・・!」
「だから無理なんです」
ドアに手をかけようとしたところで中から親友の声が聞こえて止まった。
「確かに女顔だし声だし、背も低いし・・・
正直言って本当の女の子ぐらい可愛い自信はありますけど、それでもボクは男だし。
それにボクは男と付き合う気は全くないです。」
普段マイナスイオンとか癒しオーラしか発していない様な優樹から、有無を言わなさい圧力を感じる。
ドアの隙間から一瞬見えた横顔は、申し訳なさそうな表情をしていたけど 目は凍てつくように冷たかった。
「さっきも言いましたけど僕に好意を持ってくれた事は嬉しいです。ありがとうございます。
ですが、これもさっきも言いましたけどボクはあなた達の気持ちには一切応えることが出来ません。
だから ごめんなさい。諦めてください。」
話はもうこれで終わりだと優樹が話を締める。
「でも好きなんだ!優樹っ!」
ストーカーの1人が優樹の肩を掴む。
(汚い手で優樹に触るんじゃねぇよ!)
オレはドアを開けてストーカーの手を払おうとした。
するとオレが部屋に足を入れた時、
目の前でストーカーの身体が床に沈んだ。
「『『『・・・え?』』』」
ダンッ!!と音と共に、畳と抹茶の香りを乗せた風が顔にブワッとかかる。
優樹はふぅと息を吐いて、風で上がったネクタイを直した。
・・・いや、まさかとは思うけど。
普段 腕相撲でオレに1回も勝ったことなくて。
握力が30前後しかなくて。
さらには授業の柔道でも無抵抗な小柄な人でさえ上手く投げれない。
そんなコイツが。
虫一匹殺せなさそうなコイツが・・・。
「失礼ですが先輩、ボク しつこい方が苦手なんです」
優樹の笑顔が怖いし、目が笑ってない。
というか、もう纏ってる空気も違うし別人みたいだ。
「好きな人には優しく 紳士的にしないと。
嫌われますよ。ね?」
可愛らしくにっこりと微笑むコイツの今まで
知らなかった一面を見て、初めて恐ろしく感じた。
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