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キスまで45センチ ⑨
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「…俺だけど」
何が何だか分からないが、甘利くんは俺を訪ねてきたらしい。
仕事以外で話したことはないし、普段の俺とは会ったことも無いくらいのはずなのに…。
しん…と辺りが静まる。
「ちょっとお話があるんだけど、来てくれる?」
にぃっと甘利は笑みを浮かべた。
「…分かった」
気は進まないが、この雰囲気の中嫌だとも言えない気がした。
(灯夜…)
心配そうに袖を引く兄さんを撫で、大丈夫、と伝える。
同じように心配そうな顔をした日和に頷くと、席を立って甘利くんの元へ歩いていった。
連れて行かれた先は中庭だった。
取り巻きの女達は、甘利が後で一緒に遊ぶからと理由をつけて追い払っていた。
「…それで、何?」
「お前さ…芸能人でもない雑魚庶民の癖に何ファンクラブとか作ってんの?」
眉間にシワを寄せ、睨みつけられる。
「…別に俺が作ったわけじゃないし…それに、甘利くんの方がずっと凄いし」
「当たり前なんだよそんなことは!!そうじゃねえ、お前みたいなのがいると目障りだって言ってんだよクソブサイクが!!」
ガンッと近くにあった木を思い切り甘利が殴りつけた。
「そう言われても…俺どうしたらいいの?」
「もっと愁傷にしてろって言ってんだよ、目立つな、女にいい顔するな、学校来るな」
「何でそんな…女の子にいい顔なんかしてないよ」
「うるせえ!俺のファンが少しずつお前のファンとかいうわけのわからないグループに流れてんだよ!!調子乗るんじゃねえぞ!」
「…ッガ、ハッ」
お腹を蹴られて、思わず尻もちをつく。
「痛い目に合わなきゃわからないんなら、いくらでも痛めつけてやるよ」
そう言う甘利の目は座っている。
…本気みたい…。
「…甘利くん…ごめんね、俺のせいで。でも、女の子たちをわざわざ追い払ったのって、乱暴なことする自分を見せないためだよね…?そういう気配りができれば、甘利くんはきっともっと人気者になれると思うよ」
よいしょ、と立ち上がってお尻をはたく。
お腹が鈍く痛むが、致し方ない。
「お前に何がわかる!!」
「大丈夫、甘利くんのファンの子はまだ沢山いるから。…じゃあ、俺、授業戻るから」
ぺことお辞儀をして、校舎によたよた戻る。
「そういう問題じゃねえんだよ…!」
恨みのこもったその言葉を背中に浴びせられていることには気付かないまま。
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