アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
雪花の花嫁100万アクセス記念SS
-
本当にくだらないと思う。
きっと啓一さんは喜んでくれるだろう。
それは、分かっている。
けれどこの羞恥心はどうやっても拭えないんだ。
「はぁ…。」
鏡の前で佇む雪からは深い溜息が漏らされた。
事の始まりは今朝まで遡る。
珍しく休日の今日、啓一の携帯が朝から鳴った。
雪との甘い時間を邪魔され眉間に皺を寄せ舌打ちする啓一を宥め電話を取らせると以前手掛けていた事業で問題が発生したとの事だった。
『そんなの俺抜きで対処出来るでしょう?』
『しかし先方が代表を呼べとしつこく要求してまして…。
恐らく霧生組へコンタクトを取るのが目的だとは感じているのですが。』
『はぁ…、分かった。
今から出るから。』
組が絡んで来られたら出るしかあるまい。
どんよりとした啓一の背中へ雪の白い手が添えられた。
『あー、もう…。
ごめんね?さっさと片付けられたらいいんだけど。
もしかしたら帰り遅くなるかも…。』
「ええ、連絡して下さいね?
美味しいもの用意して待ってますから。」
籍抜いときゃ良かった。
ぶつぶつと文句と垂れる啓一に苦笑を漏らし支度を手伝う。
家を出るその時まで不機嫌な啓一に、件のクレーマーへご愁傷様ですと小さく呟いた。
明け方まで可愛がられた身体は気怠くそれでも寝直すにもがらんとしたベッドに横になる気も起きなかった。
のろのろと食事を摂り、洗濯でもしようと動き出そうとした時雪の携帯が着信を告げた。
「…、はい。」
『おはようございます、には少し遅いですね。』
林田の平淡な声が耳元で響いた。
「ふふ、そうですね。」
『今宇賀神から連絡がありまして、やはり長引きそうだと。』
「そう、ですか…。」
自ら発した声があまりにも落胆していて苦笑した。
『お暇でしたら組へ行かれませんか?』
きっと気分転換に声を掛けてくれているのだろう。
林田の気遣いに、じんわりとあったかいものを感じた。
「結構久々な気がします。」
林田が運転する車の中で雪が声を発した。
『ええ、そうですね。
前回は三ヶ月ほど前だったかと。』
そんなにも出向いてなかったか、とぼんやり窓の外を眺める雪は言葉を漏らした。
『おお!雪、久し振りだな。
元気だったか?』
「はい、親父もお変わりありませんか?」
『見ての通りだ!
よし、今日の飯は俺が作ろう。
食って行けよ?』
からからと笑う組長ににこりと笑みを返した。
組長が振舞う昼食を組の皆で囲む。
今朝方、がらんとした寝室で見せた物憂げな表情は晴れていた。
『失礼します。』
着信を告げる携帯を片手に頭を下げる林田に組長が片手を上げる。
宇賀神からの進捗報告だろうか、意識を向けた雪に唐突な言葉が浴びせられた。
『雪、これやるよ。』
「え…?」
組長の言葉に聞き返す間もなく雪の手元に投げられたのはピンク色の布だった。
「なんですか、これ?」
『これ着て啓一の奴でも煽ってやれ。』
にやにやとした笑みを浮かべ顎を掻く組長に所謂そっちの話をされているのだと気が付いた。
そっと布地を開くとフリルのあしらわれたエプロンが姿を現す。
「これ…、一体どこから手に入れたんですか…。」
苦々しく問う雪に組長は一層笑みを深めた。
『ははっ、若手が何かの景品で当てたらしくてな。
罰に使えるかと思って取っておいたんだ。』
「俺、なにもしてないのに罰ゲームなんですか?」
『まあ、あいつも男だ。
こういうのには弱いだろう。』
確かに、何度か啓一に用意された下着を身に着けた事はあったがその度熱い夜が過ごされてはいた。
ううん、と唸る雪に組長の追い打ちが掛けられた。
『今日だって寂しい思いさせられたんだ、思いっきり煽って離れられなくしてやれや。』
なんだかんだと言い包められた雪の鞄にはピンクのエプロンが入っていた。
行きとは変わり言葉数の減った雪に林田が気を掛けるが心配ないと言葉を返し二人の部屋に一人で入っていった。
そして話は冒頭に戻る。
一人鏡の前で溜息を吐く雪は晒された脚を僅かに摺り寄せた。
身の丈は平均的な男子程ある雪の白い脚は惜しげもなく空気に撫ぜられる。
意を決し素肌に纏ったエプロンは後ろ半身を覆わず丸い尻がひやりとした。
数十分前に帰宅を告げる旨の連絡が啓一から寄越され帰宅はあと数分といった所だろう。
ここで鏡を見ていたって仕方がない。
食事を盛り付けようとキッチンに向かった雪が耳にしたのは鍵が差し込まれる音だった。
がちゃ、という音にはっとした雪は思わずキッチンの奥まで逃げ込んだ。
『雪、ただいまー。』
啓一の声が玄関から響く。
「おかえりなさい、ちょっと今手が離せなくて。」
出迎えに来ない事を不審に思われていないだろうか。
変に焦った思考で料理に手を伸ばした。
廊下を進む足音にどくりどくりと心臓が煩く脈打つ。
頬に熱が集まるのが分かる。
きゅ、と目を瞑った瞬間驚きの声が耳に届いた。
『ただい、え?
雪…?』
「…、お、かえりなさい。」
真っ赤な顔で肩越しに啓一に振り向いた雪にごくり、と喉が上下した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 8