アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
※うたかた
-
「キスしていい?先生」
真っ直ぐ自分を見つめてくる後藤から、秋月はもう、逃げることができなかった。
「駄目だよ、そんなの。いいわけない」
見ないでほしい。隠すことなど不可能な好意が、白々しい返事を返す。果たしてそんなものに、意味はあるのだろうか。
「…即答かよ。先生の嘘つき」
後藤の指が、ゆっくりと秋月の唇を撫でていく。今、自分はどんな表情をしているんだろう。
「やめて…見ないで」
唇が近づいて、キスをされるかと思った。重なりそうなほど近くで、言葉が低く震える。
「…それ、わざと煽ってんの?」
秋月はぼんやりと、射抜くような後藤の目に見惚れた。後藤を前にすると、ますます腑抜けになってしまう。
「まだ何もしてないのに、そんなエッチな顔されたらオレ、我慢できないんだけど」
「…それ以上言わないで。自分がどんな人間かなんて、僕が一番よくわかってる。後藤くんに、あんなところを見られて…傷つけて、幻滅させて。それでもっ、…信じてもらえなくても僕は……」
(後藤くんが好きだ…)
「僕は?」
「僕はずっと…後藤くんの、ことが」
緊張して、怖くて…でも、今言わなければいけないと思った。
「すき、です。あなたが好き」
「……」
まるで、信じられないものを見るように。
瞬きを繰り返し鼻をならした後藤は、潤んだ目を隠すように、秋月の身体を抱き寄せた。
「もっかい…言ってよ。これが、現実なら」
「大好き…。好きすぎて、ずっと後藤くんのことばかり考えてる。知ってるかもしれないけど」
「もっと教えて。先生のこと」
「…ふぁ……っ…ン…や…ぁあ……!」
「んん、センセ…」
(後藤くんと、キス…してる)
絡み合わせた舌から唾液を啜って、夢中で貪るようなキスを繰り返す。ずっと欲しかった、お互いに…こうしたかった。
「先生が好きだ…んぅ……ちゅっ…」
「はぁ…ぁん……」
唇から、自分の全てが蕩けていく。秋月は完全に降伏していた。涙が次々と溢れてくる。
(後藤くんのチンポが欲しい。それしかもう、考えられない…なんて。言える、わけない)
それをそのまま伝えることは出来なくて、微かにでも残っている理性に、我ながら馬鹿みたいだと感じる。
「どうして欲しい?オレと…どうなりたい?アンタの本心を教えて」
「ぁ…あぁ!」
低くて心地良い声が、秋月の耳をくすぐる。敏感な部分に刺激を与えられて、たまらなく背筋が震えた。
「聞かないで…!お願い……。僕っ…後藤くんに、後藤…くんにだけはっ……、ぐすっ…嫌われ、ったくない…ダメ、なの……」
「教えて。言って。嫌ったりなんかしない。信じて。オレ、秋月先生が好きだ」
「愛してるの…。好きなんて言葉じゃ、足りない…。あなたのことで、いつも頭がいっぱいで…全部っ、欲しくて……!」
さっきから、同じ言葉しか出てこない。好きだ、愛してる。全部が欲しい。いつも考えていることだ、いつも、いつも。頭がおかしくなりそうなくらいに、自分の中の殆どを後藤が占拠している。
「だったらどうして、他の男と…」
後藤の表情が苦悩に歪んだ。
「ごめん。僕が…弱くて、だらしないから…」
「答えになってねえだろ、それは…!」
(ああ…)
落ちてきた涙に、秋月の胸が痛くなる。いくら後悔しても、自分のやってきたことが変わるはずもなく、こんな時の慰め方なんて一つしか知らない。
秋月はなだめるように後藤の背中に手を伸ばし、そっと抱きしめた。
「っ…は……」
首筋に、後藤の唇が降りてくる。まさぐる指がもどかしそうに秋月のシャツのボタンを外し、その手がふと、止まった。見えないところに、別れた男の痕跡が僅かに残っている。
「これを見られたくなかった。綺麗じゃないって、知られたくなかった。君の前では、せめてただの…優しい教師で、いたかったんだ。僕は」
「痛かった…?今は、触っても大丈夫なんだよな?辛かったろ…可哀想な先生。こんな傷をつけるような人間、殺してやりたいよ。オレは、先生のこと大事にするから」
「昔のことで…。今は、大丈夫だから。後藤くんに、嫌われるのが怖くて…近づきたいのに、近づけなくて。苦しかった。本当は、先生だからなんて、ただの言い訳で」
自分の弱さを晒け出すことは、秋月にとって震えるほど勇気がいることだった。
たとえばポーカーフェイスの…長谷川のような教師だったら。頼れる同僚を、秋月は羨ましく思う。
「ごめん、先生の気持ちわかってあげられなくて。愛してる。臆病で情けなくてだらしなくて…、それでも綺麗だと思うアンタのこと、オレは、好きだから」
(これは僕に、都合のいい夢を見ているんだろうか)
「秋月先生、こっち来て」
促された先には、いつも後藤が寝ているベッドがある。こんな風にそこに自分も世話になる日が来るなんて、考えたこともなかった。
「舐めてよ。オレの」
(これが…後藤くんの)
屹立しきったペニスを前にして、秋月は生唾を飲み込んだ。すぐにしゃぶりたい気持ちを堪え、そっと先端にキスをする。
(緊張してるのか、僕は…。後藤くんが相手だから)
堅くなった半身を撫でると、その刺激に後藤がぴくりと反応するのが伝わる。馬鹿みたいにそれだけのことが嬉しくなって、それはすぐに泣きたいような気持ちに切り替わり、気を取り直して、唾液を含んだ舌でゆっくりとなぞった。付け根を指で揉みほぐすと、気持ちよさそうに後藤が喘ぐ。
「せんせっ…」
気持ち良さそうな吐息が聞こえて、ホッとした。どうすれば気持ちいいのか、その方法なら知っている。
「おいひぃ…よ…ブチュ……くちゅ…」
「う、あ、あぁ…!」
経験もテクニックも、圧倒的に太刀打ちできない。後藤は荒い息を吐き出しながら、ベッドのシーツを握りしめた。速攻で陥落させられて、なす術がない。
「ふふ…。気持ち良いんだ?後藤くん。嬉しい…もっと、もっと気持ち良くなるからね」
うっとりと嬉しそうに秋月は呟き、口腔内にペニスを飲み込んだ。生温く包み込まれる感触が、感じたことのないくらい後藤の快楽を引きずり出す。
「ああっ、ヤバ…!せんせ、本気出しすぎ!!うぁ…イイッ!すぐ出る…こんなのっ、あ、あっ…!!」
唾液で満たされた口腔内で、生き物のように秋月の舌が蠢いている。強く吸引したり優しくジュルジュルと舐め回されたり、後藤は必死で達しないように我慢した。開始五分と経たずにイッてしまうなんて、早漏と思われたくない。
「は…あ、それ…反則っ!イク……、秋月先生、オレ、もう無理出るっ!ううっ」
「んんっっ!」
深く奥まで咥えられた瞬間、勢い良く射精して、後藤は脱力した。躊躇なく精飲した秋月と目が合い、力なく笑う。
「はぁ、気持ち良すぎ…。先生エロすぎ、何なのもう。オレは嬉しいけどさ」
「だって…。ずっと欲しかったものが目の前にあるのに、僕、もう我慢できないよ。抱いて…。早く後藤くんのおちんちんで、グチョグチョにして」
「っ…!」
「僕のこと、嫌いになってないなら…」
「嫌いになんかならねーよ。好きな人に欲しいって言われて、嬉しくない奴なんていない」
(そんな嬉しいことを言われたら、欲しいものを与えられてしまったら…僕は)
こんなことを言ってくれるのが、それが後藤だなんて…これは本当に現実なのだろうか。
ゆっくりとキスを繰り返しながら、景色が反転していく。今自分は、後藤の腕の中にいる。窺うように後藤に見下ろされ、秋月は胸がいっぱいになった。
「…ん……」
「エッチな先生、すげえ興奮する。
ずっとアンタとセックスしたくて…こんな物まで持ち歩いてるから。オレ」
「ローション…?」
「触るよ。先生の全部に」
始まりからずっと、後藤はこの恋に何のためらいもない。臆病な自分にはそれが時に怖く、ドキドキする。
「あ…っ」
「乳首も勃ってる。オレに舐めてほしいって、めちゃくちゃアピールしてんじゃん」
「んっ、ひぁ…アァン……!後藤くんにされるの、気持ちぃ…イイよぉ……ハァ…ン…」
少しの刺激でも、相手が後藤だというだけで余計に感じてしまう。後藤に見られている、触れられている。嬉しくて、くすぐったくて、心地良い。
「敏感なんだな。可愛い先生…喘ぎ声、エロすぎて腰にくる」
「あっ…あぁ…!」
「もっと見せて。聴かせて。隠さないで」
「あ、後藤くん…!!」
開脚させられて、尻孔を間近で観察される恥ずかしさに、秋月は思わず瞼を閉じた。恥ずかしさと物欲しさで、おかしくなりそうだった。
(早く欲しい…)
「先生のアナル、すげえヒクヒクして誘ってる。オレのチンポが欲しいって、物欲しそうに」
孔の中に垂らされるローションの感触。すぐさま大好きな後藤の舌がそれを掻き混ぜるように侵食してきて、秋月はビクンと身体をしならせた。
「ひぁっ?!」
「全部、味わいたいんだって」
「やぁ…やだっ、もっと……奥まで欲しいのっ。舌だけじゃ…我慢、できないっ」
「男に抱かれると女みたいな言葉になるんだ、秋月先生。心配しなくても、これから、たっぷりオレの女にしてあげる」
「して…!僕を、後藤くんの女にしてっ」
「慣らしておかないと、痛いんだよな?」
「後藤くんにだったら、すぐでも…僕は、」
「チンポはちょっと待って。なるべく傷つけたくないから、先に指…な?あ…ここ、気持ちいい?」
「はぁっ…あ、アンッ……!そこ、ダメぇ…指でコリコリしないで…お願い、挿れて」
懇願されて、後藤は孔の入口に亀頭を焦らすように押し当てる。自分から誘うように、先端がめり込んでいく。
ついにこの時が来たのだ。
「…ぁ…入った……後藤くんの…」
(ずっと…ずっと欲しかった)
「や…やぁっ…!早くっ、奥まで挿してっ」
甘い悲鳴に、深く腰を突き入れる。
「っ…。挿入るよ、センセ!」
「あぁ…ん……っ!イッちゃうっ!!やっ…イクのっ、イクッ…!」
「先生…。うっ、く…!」
後藤のペニスを感じた瞬間、秋月は勢い良く吐精してしまった。そこにはろくに触ってもいないのに、だ。
「そんなに、オレのチンポが欲しかったの?
やらしい先生…。挿れただけでイッちゃうなんてさ」
「うん…欲しいの……。もっと、後藤くんでいっぱいにして。ねぇ、チンポで突きながらキスして。上も下も、ヌプヌプして」
「ああ、もう…!ん…ちゅ……」
ゆっくりと焦らすように、後藤がじわじわ腰を沈めてくる。自分の奥深くまでペニスが入っているのを感じ、秋月はまた涙を零した。
「は…あぁ…好きっ……!」
「オレも…好きだ。ずっと、こうしていたいくらい。現実だよな?先生、オレ達二人でセックスしてる」
「うん…うんっ……後藤くんのチンポが、入ってる…!」
「せんせっ、そんな締めないで…。オレがもたない。アナル、すっげえトロトロで気持ちいい…」
「あっ!あんっ…アン!…はんっ……」
がっついた猿のように奥を突きまくると、秋月の喘ぎが、すすり泣くような嬌声に変わる。
「イッちゃう、イッちゃうよぉっ」
「オレも…出そ…っ」
「ダメ、中に出してっ!後藤くんので種付けしてっ」
射精感は一度だけでなく、何度も続いた。後藤が身体を離そうとすると、腰に巻きついた脚にがっちり固められてしまう。
「うっ…先生、出る…!」
「あぁっ……すごい、止まらなっ…ひぁあっ!あっ、あっ―――ああ!アンッ!」
「先生。ほんとに、セックスが好きなんだな…」
後藤のその言葉に、一気に全身の酔いが醒めるのがわかった。気持ちよく見ていた夢がいきなり終わって、秋月を現実へと連れ戻す。
秋月が泣いているのか喘いでいるのか、きっと、後藤には区別もできなかっただろう。
***
それから先のことは、あまり憶えていない。
どうやって後藤と別れたのか、保健室を出たのか…。
一番最初に声をかけてきたのは、抱えきれないほどの食べ物を手にした芝木だ。
「どこ行ってたんだ、秋月?俺はちゃんと、お前の分もゲットしてきたんだぞ」
「…シバちゃん」
他人を見る度羨ましくなる癖。もういい加減、本当に…直したい。
「感動もののドラマでも上映してたのか?」
自分の赤く濡れた目を指しているのだということは、秋月にも何となく理解できた。
「…どっちかっていうと、コメディかな。笑えないけど」
主演は自分だ。馬鹿らしい。こんな馬鹿は他にいないだろう。きっと、笑いさえ取れない。
「俺、お笑い大好きなんだよな。何組でやってるんだ?」
「………もう、終わっちゃった」
終わってしまった。
言葉にするとその現実が脳裏に留まり、秋月は緩くなった涙腺を隠すように俯いた。
「残念だなあ。そうだ、秋月。長谷川先生が探してたぞ」
ドーナツを差しだしてきた芝木に、首を振る。何か食べたい気分じゃない。
思いきり泣いてしまえば、楽なのかもしれないが。
「何の用で?」
「さあ…。俺は、急いだ方がいいと思うけど」
「…わかった。僕も、長谷川先生を探してみる」
伏せがちに微笑む秋月を心配そうに見送ると、芝木は溜息を殺した。
事情はわからないが慰めてもらえなんて、言葉に出せるはずもないだろう。
長谷川はすぐに見つかった。生徒指導室で、羽目を外した生徒にお説教をしていたようで、反省した様子の生徒とすれ違う。それならば自分も指導されるべきなのかもしれないと、秋月はぼんやり思った。
いつも平静な長谷川は、本当に自分と大違いだ。
「あの、お呼びですか。芝木先生が、」
「俺は呼んでいませんよ」
長谷川は、無表情のままそう返事をする。
なんだか気持ちを挫かれたような気になって、秋月は溜息を殺した。
「…そう、なんですか。失礼しましっ」
「待ってください」
閉めようとしたドアをいつの間にかこじ開けられ、その足の長さに感心する。
「あっ、何―――ですか」
真っ直ぐに顔が見られなかった。後ろから、ゆっくりとあやすように抱きしめられる。
途端に生まれたのは安堵感。気が抜けたのかもしれない。
「泣いてもいいですよ。…そんなに、我慢しなくてもいい」
優しく髪を撫でる仕草。じわじわと涙が込みあげてきて、秋月は表情を歪めた。
「…ふ」
「あなたが落ち着くまでずっと、俺はこうしてそばにいます」
染みるような落ち着いた声音だ。
「……何で、なんですか…。どうしてそんなに、わかるんですか……!」
後藤には何の気持ちだって、上手く伝えられないというのに。
言葉がなくても、長谷川は何だって理解してしまうのだ。こんなに、弱い自分を。
「きれいなら、良かった…!もっと、やましいことなんて何もなくて、そうしたら、こ…んな風にっ…!僕は、嬉しいはずなのに…抱かれて、彼に抱かれて…どうして…苦しいんです、長谷川先生!ぼ、くは…!!」
溢れ出すのは感情と涙と、他に何があるのだろうか。
「…秋月先生…」
「なん…っで!…こんなに、惨めな気持ちになるんだ。何で、望んだことなのに、自分でっ……。好きだから抱かれたくて嫌われたくなくて、怖くて…上手く表現できなくて、誤解されて裏目に出るんだ、空回りしてばっかりで…好きな気持ちがっ」
しゃくりあげながら、秋月は涙を拭う。辛くてどうすればいいか、全然わからない。
望み通り抱かれたというのに、この寂しさは何なのだろうか。苦しかった。
本気になってしまった。気持ちよくて、夢みたいで…後藤とのセックスに、演技なんてできるわけなかった。全部見られて、もう隠すものは何一つ残っていない。
自分の中が、空っぽになってしまった。
「話の途中、すみませんが」
激昂を遮るように、抱かれる力が強くなる。低い声が、心地良く耳に届く。
秋月はされるがまま、長谷川に身体を預けた。
「あなたに告白しても、いいですか。言葉で伝えたことは、なかったような気がするので」
すぐには状況を把握することは、出来なかったのだけれど。
「好きなんです、秋月先生。俺とつきあってもらえませんか」
振り向かされて、こんな真剣な長谷川を見たのは初めてで…言葉に詰まる。
長い指が唇をなぞり、秋月はようやく我に返った。
「こんな時に何をっ…!」
「確かに俺は、あなたの弱みにつけこもうとしている、最低な男だ。手段を選んでいられない。…誰かを欲しいと思ったのは、初めてなんです。秋月先生」
キスから逃れるように顔を背けて、うろたえた秋月は吐き出すように叫んだ。
「やめてください、今何を言われたって…僕は!」
「好きなんだ。後藤にも誰にも、あなたを渡したくない」
「…んぅっ……」
まさか本気だったなんて、思わなかった。…周りの感情なんていつも、目に入らない。
唇がようやく離れ、長谷川の身体を押しのける。秋月が恨めしげに睨むと、穏やかに笑うその表情がたまらなく悔しかった。
「自分でも、わかっているんじゃないですか?あなたの隣に相応しいのは、大人の男だと思いますがね。あなたが後藤ではなく、俺を選ぶのを待っています」
「…長谷川先生」
「もう、涙は止まったようですね。今日は一人で帰れそうですか?」
子供扱いだ。始めから、まるで彼は秋月の保護者のように接してきたのだ。
気を許したらこの、告白。なじる気にもなれない。あいにく、今はそれどころではなかった。
「…平気です」
「残念ですね。ではまた明日、秋月先生」
何事もなかったかのように振る舞う長谷川に口を開きかけ、結局秋月は何も言わずにその場を離れた。一度に色んなことを、考えられるほど器用でもない。
こんなに心を、後藤だけが占めているというのに。
(僕たちは、線を越えたんだろうか?)
止まったと思っていた涙がまた込みあげてきて、秋月は唇を噛む。明日が振り替え休日で良かった、と思った。瞼も腫れて、みっともない顔になるだろう。
「こんなに持てないって!マーサっ!!…あっ、秋月先生!さよーならっ」
「羽柴くん、…後藤くん……」
両手にいっぱい紙袋を抱えて、秋月に気づいた羽柴が頭を下げる。
「秋月先生、さようなら」
笑みすら浮かべた後藤の顔を、真っ直ぐに見ることはできなかった。
彼に抱かれたのだ、と思った。それは嘘みたいな現実で、けれど…素直に喜べる変化ではない。
「…さよなら」
二人の隣りを擦り抜ける。
それは確かに、何かへの別れの言葉だった。
第一章 完
To be continued…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
25 / 50