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見上げた空に
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影宮視点3
『ッはぁ………はぁ……ッ』
俺は走りながら逃げ場所を探した。
走って走って、探し回った。
とにかく今は1人になりたかった。1人になって落ち着きたかった。
この夏の暑い中、校内を走り回るのはちょっとキツい。
(この時間帯…誰もいない場所はッ………………)
いつもの木の下。
そうも考えたが、あそこは事務員の先生や掃除のおじさんが見回りに来るから危険。
プールサイドは…?
いやだめだ。1時間目が体育のクラスがプールを使うだろう。
学校とは、広い様に思えて案外狭い。
逃げて隠れたくても学校に生徒がいる限り、教室は使われる。逃げ場所はない………。どうする…………。
………あッ、まだ1つ残ってるじゃねぇか。
行ってないとこ。誰も来なくて授業でも使わない場所。
俺は、廊下の隅でしゃがみ込んで息を整えた後
再び走り出した。
『きっつ……!はぁッ……はッ………ゴホッ!つ、着いた…』
俺が向かったのは屋上。
生徒は普段、立ち入り禁止のエリアだ。鍵が掛かっていて扉は開けられない。
でも3桁のダイアル式の鍵ではなく南京錠。
よく、泥棒が南京錠の穴に針金を突っ込んでドアを開けて家に忍び込むって感じのドラマがあるが、ちょうどそんな奴。
ぶっちゃけ助かった。
こういう鍵なら針金の様な物さえあれば俺でも簡単に開けられる。
俺は周りに何か細い物が落ちていないかと探した。
すると足元にヘアピンが落ちている事に気づいた。
《ヘアピンで南京錠を開けられる》なんて話はよく聞く。俺は案外器用だから何とかなるだろ。
そう思い、ヘアピンでカチャカチャやっているうちに《カチッ》と手応えがあった。
おっ?、と思ってそっとドアノブを捻ると扉が開いた。
屋上に出てから誰も入って来ないように、鍵を内側から掛ける。
漫画やドラマで屋上で昼飯を食べたり授業をサボったりしている場面をよく目にするが、あんなものはテレビやアニメの中だけの話。
【危険だから】
【過去に転落した人がいた】
【自殺者を出さない為】
などの理由が主だろう。
だいたいの学校は規則で立ち入り禁止になっている事が多い。
だからこの学校も立ち入り禁止なのだろう。
季節は夏。
まっさらな空に入道雲が浮かんでいる。
これぞ夏、と言えるような天気だ。
屋上から見上げる空は、いつもと違った感じがする気がする。
(やっと…………1人になれた……。)
今は、これからの対策を考えなければ。
あいつに接触するのは正直怖い。
だが、あれは昔の話。ずっと記憶を引きずって恐れていても前には進めない。
………進まなければ。
俺は屋上の真ん中の方へ歩いて行き、手を首の後ろで組んでその場に寝転んだ。
頬を掠めていく風と、風に揺らされた木々の音が心地良かった。
そんな音を聞いていると眠くなり、俺は目を閉じた。
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