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涙の行方
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影宮視点4
気づいた時には、もう夕方になっていた。
『やっべッ……………もうこんな時間……!?
すっかり寝ちまったか……』
跳ね起きて携帯を開き時間を確認すると午後5:30。
夕方といっても夏だから地球の自転の関係でまだ明るいのだが。
扉の鍵を内側から開け、出た後には南京錠をしっかりと元通りに付けておき、階段を降りて行く。
この時間は、みんな部活だったり帰ったりしている時間。校舎に誰の姿もない。まぁ、これはこれで、色々とありがたい。
ため息を付いて教室に置きっぱなしになっている自分の荷物を取って帰ろうとしていると
廊下の曲がり角で何かに衝突してしまい、ドッと自分も相手も倒れ込む。
『ッてぇ………おい、あんた大丈b…………あ』
『か゛け゛み゛や゛ぐん゛ーーーーーーー』
ぶつかったのは柳田だった。
『影宮゛!!!今までどこ行ってたんだよ!!探したんだぞ!!!』
そう言いながら立ち上がり、目に涙を溜めてポロポロと流しては袖でグイッと涙を拭う柳田。
ぶつかったし、なんか柳田泣いてるし、いきなりキレられてるし、急に名前呼び捨てにされてるし。
もう何が何だかわからなくなりテンパる俺。
『お…おい、柳田……?どしたんだよ』
『どしたんだ、じゃないよ!!バカ!!
おッ……俺……ずっと影宮の事、探してたんだよ!!!
朝、急に出て行っちゃったし!1時間目も戻って来ないし!昼休みもあの木の下に来ないし!
だから俺、1人で昼ご飯食べたし!!!今日、子猫に餌あげたの俺だし!!!』
『??…えーッと……つまり何が言いたい?』
『何でわからねぇの゛かな゛ぁ………』
そう言うと柳田は上半身だけ起き上がっている俺の身体を押し倒した。
『い゛ッて!!!……なにすnッ』
『心配したって言ってんの゛!!!!!!』
俺の言葉をかき消し、柳田がそう叫んだ。
『え……………心配…?何で……?』
『はぁ゛?!何言ってんだよ?!
大切な友達が、急にいなくなったら普通心配するだろーが!!!!どこで何してたんだよバカ!!!!』
……………あぁ。そうか。
こいつは、ずっと俺の事探して学校中走り回って探してくれたのか。
だからこんなに息切らしてんのか…。
だから………こんなに俺の為に泣いてくれてんのか…。
俺の胸に顔を擦り付けながら涙を落とす柳田。
『……ごめんな。
俺…、まだ気持ちの整理出来てなくて理由は言えないんだけどずっと屋上にいたんだよ。
悩んでたらいつの間にか寝ちまって…この……時間に…。………………まじごめん柳田。
心配してくれて…ありがとな』
俺は倒れ込んだまま、柳田の頭をそっと撫でた。
『あーーも゛ーーーーーッ…………。
もうどこにも行くなよ……………………!
行っていいけどさ!?どこに行くのかとか、どれくらいで帰るのか、とか俺に行ってからにしてよ!心配するだろ!』
『ああ。そうだな。
ははッ、お前は俺の母さんかっての…。
あ、つか何でさっきから呼び捨て?』
『怒ってたから。
………まぁ、友達になった訳だし、ずっと《くん》付けててもなんか気持ち悪いから呼び捨てにしてみた。ダメか?』
『いや、影宮でいいよ』
(人に心配されるって、こんなに温けぇもんなのか…。
……………柳田に心配してもらって嬉しい、なんて今は柳田に言えるわけねぇや。)
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