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タツの家と俺の家
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イヤホン付け直そうとしないってことは、俺まだ話しかけてもいいって事だよな。
ああ、ヤバイ。こういうちょっとした事でめちゃくちゃ嬉しくなる。
どんだけタツのこと好きなんだよって自分でも引くレベル。
だから変な意味じゃないって。
「タツうち来ない?」
「は?行かねーよ」
何で急にそんな事言い出すんだって顔。当たり前みたいに行かないって宣言されて寂しい。
「なんで?」
「行ってする事ねぇし」
「御飯とか一緒に食べれるよ。俺と」
「なんで自信満々にそれが言えた」
はいはい分かってますよ。
タツには需要無いですよね。俺なんて。
うわ、自分で思って超辛くなってきた。
「それでもさあ、夏美さんとか、ヨシとか、親父とかと話出来るじゃん。もっとうち来ればいいのに」
夏美さん、とはヨシとタツの実の母親のことだ。
いくら今は実の父親と住んでて父方の籍に入っていたとしても、タツは今俺の住んでる家に住んでたわけだし、うちの家はタツの家でもある。
なのにタツはまるで他人の家みたいに全く寄り付かない。きっとうちの家に思い出とかある筈なのに。
だって小6までって人生の中で一番長い期間じゃん。その期間うちの家で住んでたんだから、皆との思い出が沢山あるに決まってる。
俺の知らない、タツの思い出が。
って言っても、今も大してタツの事を知ってる訳じゃないけど。っていうか、知らないことの方が多いし。
だから知りたい。話したい。
タツはうちの家にいた時どんなことしたの?学校どんな感じ?友達ってどういう感じの人とつるんでる?いまハマってることは?将来何になりたい?今彼女いるの?
うわ、最後のとかめっちゃ気になるわ。
俺がどんなにそう思っても、タツが俺のこと嫌ってるから距離は一向に縮まらない。
それでもいい。俺じゃなくてもいいからさ、他のみんなに会うためにうちに来てよ。
そしたらタツと話すチャンス増えるじゃん。
「しょっちゅう人んちに行ってたら変だろ」
「なんで?あの家はタツの家でもあんのに」
「もうちげえよ」
何でそんな寂しいこと言うんだろう。そんなの親父たちが聞いたら絶対悲しむだろうに。
タツって家族想いだけど、そういうことろ冷めてる。
「じゃあ俺がタツんち行く」
「は?もっと変だろ」
俺の突拍子ない提案に驚いて、眉をひそめるタツ。オッケーって言われたらガチで行くつもりだったけどやっぱ無理か。
「じゃあうち来てよ」
「無理」
なんで。親父どうこうより、もう俺が一番悲しんでるんだけど。
胸のちょっと上らへんがずん、と重くなる感じがして、急激に気分が落ちる。
「タツと正月しか会えないとか、寂しすぎる」
自分でも引くくらい弱くて暗い声で、ぽつり、と言った。
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