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床に折り畳み式の小さな机を置いて、作った料理を並べた。肉じゃがと、ほうれん草のおひたしと冷奴、味噌汁とごはん。何てことない普通の夕食メニューだが、彰吾は目を輝かせている。
「やっべ......幸せすぎてどうしよ」
買い物に行ったとき、お揃いの箸とマグカップも買った。そんな恥ずかしいこと本来なら大嫌いだけど、彰吾が楽しそうにしていたから、何も口を挟まなかった。
「幸せ噛み締める前に、ごはん食べて。冷めるから」
「いっただっきまっす!」
一口食べる度に、旨い旨いと言う。食べっぷりもよくて、大皿に盛った肉じゃががどんどん減っていく。
「彰吾、もうちょっとゆっくり食べたら?」
「あっ、悪い、俺ばっか肉じゃが食べてた?」
「それは構わないけど。ね、美味しい?」
「今まで食べたどんな料理より美味しい」
彰吾の言うことはいちいち大げさだけど、それが嬉しかったりもする。彰吾は嘘をつかない人間だから......だから、彰吾の言葉は素直に受け止められる。
「ごはん粒ついてる」
「え、うそ、どこ」
本当は付いてないけど、俺は彰吾と違って正直に生きられないから。
「ここ」
唇の端を舌で撫でてキスをした。
「ほんとについてた?」
ちゅ、と音をたてて離れれば、彰吾はクスクス笑っていた。
「ほんとほんと。ほら、そっちもついてる」
反対側の唇の端と、鼻の先にもキスをした。
「そんなに食い散らかしてねぇよ」
「あはは」
彰吾といると楽しい。声を出して笑うことも、こんなに楽しい食事も、すごく久しぶりのことだった。
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