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「ごちそうさま!あー美味しかったー!」
「お粗末様でした」
「あ、片付けは俺がやるよ」
食べ終わった食器を重ねて下げようとしたところで、彰吾にそう引き留められた。
「安心して、バイトでしょっちゅうしてたから、皿洗いだけは得意なんだって」
それならばと全部任せることにして、俺は壁に凭れて座ったまま、見るともなくスマホを弄った。
そういえば、たかが皿洗いでも誰かにやってもらうのは初めてかもしれない。父はまずやらないし、龍弥には俺がさせなかった。風呂掃除とかごみ捨てとか、毎日の些細な家事も全て自分でやっていて、もはやそれが当たり前になっていたけど、彰吾と暮らしているとしばしば手伝ってくれていたことに、今さら気づいた。掃除も炊事も苦手だとは言っているけど、何も言わなくてもごみを捨ててくれるし、風呂やトイレも綺麗にしてくれている。もちろん、今まで独り暮らししていたわけだからその程度はできて当然なのかもしれないけど、今も鼻唄混じりに皿を洗っている後ろ姿に、無性に愛しさが込み上げてきた。
「わっ......どうしたの、雅ちゃん」
彰吾の背中に抱きついてみた。
「さっきの、仕返し」
俺より10センチ以上背が高い彰吾の背中は広くて、温かかった。
「何それ」
「邪魔でしょ?」
「んーん。可愛くてたまんない。っつーか、俺は邪魔だったんだ」
「うん」
「うわ、ハッキリ言う」
カラカラ笑いながら、洗い終わったのか手を拭いて振り返った。その笑顔を見つめながら、少しだけ正直になってみる。
「でも、嫌じゃなかった」
ぽつりとそう言っただけで、彰吾はくしゃっと破顔して、俺を力一杯抱きしめてきた。
「雅ちゃん、明日もごはん作ってくれる?」
「ん......」
「明後日も、明明後日も作ってくれたら、嬉しいな」
「ん、いいよ」
頬に、触れるだけのキスをされた。それが気持ちよくて思わず目を閉じると、優しい口づけが落とされた。
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