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95【Miyabi】
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「......ばっかみたい」
手のひらについた自分の精液を見ながら、スゥッと冷静になっていく。
「ありえない、ほんと、ありえない」
『......何が?』
彰吾の声は、どこまでも優しくて。
こんな自分、知らなかった。たかが数日離れただけでこんなに寂しいとか、こんなにも彰吾の熱を求めているとか。
『雅ちゃん、大好きだよ』
急に恥ずかしくなってきて、何も言えなくなる。
『眠くなってきた?』
何も言わない俺に、それでも優しく話しかけてくれる。
「彰吾......」
『ん?』
「水曜の夜帰って、木曜と金曜はアイリスの撮影」
『うん』
「土曜はそっちでイベントで、日曜は休み」
『俺も、次の日曜は午後からは休み』
「うん......」
『早く帰ってきてー。一人は寂しいワン』
急に犬の真似をするのが、可愛いと思ってしまった。
「いいこにしててね」
『クゥーン』
「似合わない」
『ヒドッ』
「あはは......」
彰吾と一緒に暮らし初めて一ヶ月経つが、出会ってからまだいくらも経っていない。それなのに、いつの間にか彰吾の存在は俺の中でとても大きくなっていて、時には龍弥のことさえ忘れてしまうくらいだった。
「彰吾、好きだよ」
『ワン!』
「大好き」
『ワンワン!』
「好きって言ってくれないの?」
『ご主人、愛してるワン』
「あは......っ、ダメだ、彰吾に犬耳と尻尾生えてるの想像しちゃった」
こんなに笑ったのは、いつぶりだろう。自分の心を押さえつけてクールな仮面を被り続けてきたせいで、本当の自分を見失いかけていたけれど、彰吾の前ならとても自然でいられる気がした。
「そろそろ切らなきゃ」
『クゥーン』
「もぉ、それはやめてって」
『雅ちゃんがそんな笑ってるの初めてかも』
「うん、初めてかも」
電話を切るのが名残惜しいと思ったりして。電話を耳に当てて、ベッドに転がって自分自身を抱きしめる。
「彰吾......おやすみ」
『ん......寒くなってきたから、温かくしてね』
「彰吾がいないと寒い」
『帰ってきたらいっぱい温めてあげるから......じゃあね、おやすみ』
ビジネスホテルのセミダブルのベッドがあまりにも広く感じて、布団を巻きつけるようにして眠りについた。
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