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笑顔の裏は真っ黒
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手首に違和感を覚え、薄っすらと目を開ける。
けれど、まだ視界がぼやけていてうまく周りが
見渡せない。俺は起き上がろうと床に手をつこ
うとした…が、
「……?」
手が前に出ない。
何度も、何度も動かしても。
徐々に焦りが増し、
そこではっきりと目が覚める。
無理矢理胴体だけで起き上がり自分の
手を見ると、後ろで綱で縛られていて
それは大きな柱に括りつけられていた。
どうして、こんな…
俺は助けを求めるべく再び周りを見回す。
目が慣れてきて、ここは物置場のような所だと
分かった。そして、ひとつの扉を見つける。
そこに向かって叫ぼうと
息を吸い込んだ瞬間、扉が開いた。
…つづるさん。
思わず助けて欲しいと言おうとしたが、
そこで息を詰めた。つづるさんの表情には一切
焦った様子がなく、落ち着いていたからだ。
「つづ、る…さ…」
それからゆっくりと近づいてきて、言葉が引っかかる。
ついには目の前にしゃがみ込み、無表情のまま
口を開いた。
「翠君をここに縛ったのは私だよ」
つづるさんが?
少ししか一緒にいなかったけれど、
優しかった…のに。
「なんでっ…そんな…」
目の前にいる彼の存在が、更に怖いものとなる。
「しかし、これは仕方が無いんだ」
何が、仕方がないの?分からないことが
あり過ぎて聞いていることしかできない。
「それは、君が『犬子』だから。
存在してはいけない者なのだよ」
「いぬ…ご?」
─俺は、ここで初めて知ったんだ。
犬子はこの世に居ちゃいけないんだって。
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