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午後だけの留守番
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それにしても、一樹が仕事に行った今、
この空間が物凄く静かになった気がする。
まぁ、そうだよな。一緒にいる時はいつも
あっちから話しかけてきてたし、こんなに
静かな時間は逆に久しぶりだ。
さっき家から出るなと言われて、今自分が
そのまま家から出ないでいるというのが
何か
嫌だけれど、この貴重な時間。ゆっくりする
ことにしよう。
今家を飛び出したところで、結局また捕まって
施設に送り戻されるのがオチだろうからさ。
そう言えば、俺が病院にいて翠達が来た時に
聞いたことなのだが、俺と翠は同じ施設に
いたみたいだった。
あそこでは犬子同士を会わせない決まりが
あるのか知らないけれど、顔を合わせたこと
なんてなかったな。それじゃ気づかない筈だ。
翠、元気かな。
…と、ふと思った。俺の過去を聞いて泣いて
くれたんだし、悪いやつじゃない事は確かだから。
それに、似た物同士だから…な。
ああ、何故だかそこにいた頃が随分前のように感じる。
けれど自分の肌さえ見てしまえば思い出せと
言わんばかりに傷が残っている。今はガーゼで
隠れているけれど、お風呂の時は、最悪。
俺はギュッと一度目を瞑った。
独りになると、どうしても色々と考えてしまう。
もういいや、誰もいないし少し寝よう。
テーブルに突っ伏し今度こそ目を閉じる。
─起きたら夜にならないかな。
なんて、少しだけ思ってしまっていた
自分がいたのは胸の奥にしまっておく。
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