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高鳴る心
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あれからもずっとなづなの側にいて、
もうすっかり夕方になってしまった。
こうなると、かなり時間が経ったんだなと
確信したけれど、俺の中ではあっという間
の時間だったような気がした。
「時間が経つのって早いよなぁ」
空を眺めながら思いのままに呟く。
今日は、なづなと色々な話ができた。
どうでもいいことに、花や植物のこととか。
…まぁ、大体俺がほとんど喋ってたかもしれない。
でも、そんな俺の一方的な話を静かにずっと
聞いていてくれて、本当になづなは優しいと思った。
そして今の本音を言ってしまうと、まだまだ
帰りたくなんてない。一緒に居たいなって。
でもちゃんとよく考えてみなよ自分、なづな
だって帰らなくちゃいけないんだ。それを
止めるなんていけない。そんな名残惜しい
気持ちを抑え、笑顔を向けた。
「それじゃあ、そろそろ帰らなきゃ。
なづな、今日はありがとな!楽しかったよ!」
そして、俺はずっと手元に持っていた"マフラー"を
なづなの首に緩く巻いた。反応は相変わらず
疑問の表情。
昨日の夕方、なづなが良くない呼吸をしていた。
それが家に帰ってからもどうも気掛かりで、
もしかすると身体が冷えてしまったからかも
しれないと思ってこのマフラーを持って来た。
初めて会った時やピンを留めてあげた時もたけど、
マフラーを巻いている時にも肌を見て改めて思う。
なづな、やっぱり白いなぁ…って。
だから尚更心配で、これを持ってこない訳がなかった。
「ほらっ、風邪引いちゃだめだからな」
「……んで…」
「ん、どうした?」
何か言ったようだが、俺の耳までには届かない。
聞き返すとなづなは首を振り、悲しい顔をした。
「…ありがとう」
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その後、俺はなづなと少し話してから別れ、
家までの帰り道で珍しく眉を寄せてひとり歩いていた。
「…」
…あの悲しそうな顔が、どうも忘れられない。
あの時、なづながどういう気持ちでいたのかが
分からなかった。やはりなづなは何かを
抱え込んでいるのではないか?だとするなら…
聞いてあげたい。
そして、頼って欲しい。
俺、なづなの為なら何だってしてあげたいと
思えるんだ。ただのお節介なのかもしれないけど、
本気でそう思える。
そうとなれば、明日にでも聞いてみようか。
いや、無理に聞き出そうとはしない。なづなが
もし言ってくれるのなら、それまで待つよ。
そこで、いつの間にか自分がこんなにも真剣に
考えていることに気が付いてハッと我に返り、
夕焼けに照らされた道でピタリと足を止めた。
─ああ、俺って…
なづなが好きなんだ。
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