アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
弱い俺〜龍樹side〜
-
side:龍樹
日記を閉じた。
篠宮がそんな前から俺のことを好いていてくれたことも、制裁に心を痛めていたことも、何も知らなかった。
隊長就任の挨拶に来たとき、篠宮は笑っていた。
その笑顔の裏に、どれだけの悲しみや痛みを抱えていたんだろう。
どうせ俺に媚びるだけだ、と決めつけてろくに話を聞きもしなかった俺を、どんな目で見ていたんだろう。
勝手に期待して、自分が傷つきたくないなんて理由で勝手に疑って。
篠宮の気持ちなんて、ちっとも考えていなかった。
俺は、何も見ようとしていなかったんだ。
家柄なんて関係ない、自分自身を否定されるのが怖くて、ひたすら人を疑うことで、恐怖から逃げ続けていた。
そのせいで誰かが苦しんでいるなんて、考えもしなかった。
篠宮が総隊長になってから、急に制裁がほとんど無くなったこと。
しつこくつきまわってくる親衛隊員が減ったこと。
篠宮が動いているんだって事は、少し考えればすぐに分かったはずなのに。
閉じたノートに目を落とす。
続きを見るのが、怖くなった。
太陽が転校してきて、制裁が酷くなって。
篠宮は、必死で止めようとしたんだろう。
俺の前に現れなくなったのも、きっと制裁現場を走り回っていたからで。
それなのに俺は、篠宮が制裁の首謀者だと決めつけて、何度も暴言を吐いた。
今まで読んだ部分でも、いつも俺の幸せを願っていた篠宮は、その時どれほど傷ついたんだろう。
自分が篠宮を傷つけた、という確かな証拠を見たくなくて、日記を閉じてしまったけど。
篠宮は俺の何倍も苦しんでいたんだから、ここで俺が現実から逃げちゃいけない。
俺は、意を決して再び日記を開いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
23 / 58