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旅の11
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翌朝、道場のお弟子さんや子供たち、それからオレが助けて孤児院預かりになった子供たちに見送られて、旦那様と2人で王都を出た。
「お兄ちゃん、行っちゃうの?」
孤児たちには泣かれたけど、いつまでも滞在できないんだし仕方ない。
「もっと大きくなったら、田舎領に来ればいいよ。治安はあんまよくないけど、仕事はいっぱいあるから」
そう言ってみんなの頭をちょっとずつ撫でると、小っちゃい子たちに抱き付かれた。
年長の例のひったくりの子は、今度は抱き付いて来なかった。遠慮したっていうより、隣にいた旦那様が怖い顔してたからかも知れない。
嫉妬してくれるのは嬉しいけど、15にもなってない子を威嚇するのはどうかと思った。
「レイ、行くぞ」
促され、騎乗する。
これで終わりって思うと名残惜しいけど、王都に来られてよかった。充実した4日間だった。
行きも大量のお土産を用意して貰ってたけど、帰りはなぜか、2割増しくらいに荷物が増えた。じーちゃんや両親、学校の同僚や生徒たち、イトコやご近所さんへのお土産がいっぱいだ。
旦那様も、きっと騎士団の方々に配るんだろう。別行動中に買ったらしい、大きな荷物を抱えてた。
お義母様をオレに任せて、一体どんな店に行ったんだろう?
「皆様へのお土産、何を買ったんですか?」
馬で並走しながら何となく訊くと、旦那様は「後のお楽しみだ」ってニヤッと笑った。
一瞬、ドキッとしてゾクッとしたんだけど、なんでだろう?
お楽しみって……えっ、騎士団の方々へのお土産のことだよ、ね?
気になったけど、旦那様が「走るぞ!」って早駆けを始めて、慌ててついてく内に、イヤな予感ごと忘れちゃった。
王都から離れるごとに人通りが少なくなり、代わりに自然が増えていく。
周りに人が多かったから、知らず知らず緊張してたみたい。木立を抜け、野原を通り、小川で一休みして、ようやく肩から力が抜けた。
例のお土産の件を思い出したのは、10日ぶりの我が家に帰って来てからのことだ。
馬を返すついでに騎士団とオレのじーちゃんとことに挨拶行って、お土産渡してご飯食べて……それからようやく、オレたちの家に帰って来た。
「ただいま」
って、2人揃って言えて嬉しい。
お風呂の後、久々にうちで2人きりでまったりと過ごした。ゆるく腕の中に囲われて、ヒザの上に乗せられて座らされる。こんな風に堂々と、向かい合って抱き合うのも久々だ。
行き返りの道中も2人きりだったけど、宿屋じゃやっぱ色々恥ずかしくて添い寝するしかできなかったし。旦那様のご実家では、こっそりキスするだけでも緊張した。
「久々にゆっくりできるな」
王都で買ったワインを一緒に飲みながら、旦那様が耳元で囁く。
ヒザの上に座らされると、逃げ場がない。耳元にキスされても、ビクッと肩を竦めるしかなかった。
ワインを口移しで飲まされて、じわーっと頬を熱く染める。
10日ぶりの我が家、10日ぶりの団らん、10日ぶりの抱擁とキスに、くらくらしながら目を閉じる。
目眩がして目を開けていられないのは、疲れのせい? それとも酔いのせい?
「旦那、さま……」
うっとりと身を任せて深いキスに応じると、手元からワイングラスが抜かれ、ふわっと横抱きにされて、ベッドルームに連れて行かれた。
10日ぶりの営み、だ。
期待にドキドキするのが恥ずかしいけど止められない。顔がどんどん熱くなって、体の中心に熱がこもる。
「お前に土産を買って来た」
ベッドに寝かされ、上から覆い被さられて、意外な言葉に目を開く。
そしたら、キリッと整った格好いい顔が目の前にあって、優しく微笑まれて、またドキッとした。
この人がこんな熱い視線を向けるのはオレだけ。
キスしたいって思うのも、抱きたいって思うのも、オレだけなんだって教えてくれた。自信持っていいんだ、って。
半分はリップサービスだと思うけど、半分は本音だって信じてもいいのかな、と思う。
旦那様に群がる女の人たちの集団に、すっごく嫉妬したのは事実だけど、それを旦那様が「失せろ」とか「邪魔だ」とか、キツク追い払ってたのも事実だ。
――大好き。
「お土産、オレに?」
嬉しくてうっとりと笑うと、「嬉しいか?」ってうかがうように訊かれた。
「はい」
そんなの、嬉しいに決まってる。オレのことを考えながら、旦那様が色々選んでくれたんだって思うと、すごく嬉しい。気持ちだけで嬉しい。
お菓子やジュースや果物やワイン、時々花なんかも仕事帰りに買ってくれる旦那様。どんな顔でどんな風に選んでくれてるのかなって、考えただけで笑顔になれる。
「オレ、旦那様が買ってくれたものなら、何でも嬉しいし、幸せです」
にへっと笑いながら正直に告げて、照れ隠しに両手を回してしがみつく。ぽんぽんと軽く頭を撫でられ、そっと離れると、深く長くキスされた。
「そうか、喜んで貰えてよかった」
温かくて大きな手のひらが、オレの片頬をひと撫でする。
オレを仰向けに寝かせたまま、ギシッとベッドから降りる旦那様。どうしたんだろうと思って目を向けると、彼は自分の荷物を開けて中に右手を突っ込んで――。
ピンクと黒の見覚えのある派手な袋を、オレに見せつけるように取り出した。
ドキッとしたのは、猫セットで大変な目にあったからだ。
ベッドの上に起き上がり、ぶんぶんと首を振り、両手を振る。
「ねっ、猫はダメです」
上ずった声で言い渡すと、旦那様はニヤッと笑いながら「分かってる」って、ちっとも分かってなさそうに言った。
「猫じゃないならいいな?」
って。
意味が分かんなかった。
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