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五
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「結局は住まないと?まったく貴方という人間はどうしてこうも・・・。」
斉宮は俺を完全にバカにしている。
本家に我が物顔で出入りしているこの男は俺の幼馴染ということになっているが実際は違う。
腹違いの兄弟という面倒な関係だ。1年と少しだけ年下の斉宮は、俺と同様ヤクザになりたいわけではない。もっと別のことを考えている、それは当たっているだろう。
「アレとは切れたから、もう必要がなくなった。仕方がないだろう。」
「よくもまあ・・・。」
人生始まって以来、惚れたと実感できた女だった。俺に接する態度は自然だったし、一緒にいると落ち着いた。ささやかな部屋の小さなベランダにプランターを並べて花を植える女。
俺にぴったりだと思ったし、欲がなかった。他の女のように物を強請る事もなかったし、桜沢に生意気な口をきくこともしなかった。
男の地位に笠を着て、自分も偉くなったように振る舞う女は多い。俺はそれが大嫌いだった。
桜沢が丁寧な対応をするのは、「俺」の相手だからであってお前じゃない!それを言うとたいていの女は納得しなかったから切る、その繰り返しだ。
今回は違う、そう思ったのだ。
ゴリ押しして手に入れた物件で同居しようと決めたとき、桜沢は黙って封筒をさし出した。
中身は俺が惚れた女の調査報告。
ささやかな住まいだと思っていたアパートは友人の部屋。
俺の昔の女達から情報を仕入れ、周到に準備し演技で固めた。
正体はけっこうな稼ぎのある銀座の女で、欲しかったのは俺の後ろにぶら下がる金と権力。
あまりにダメすぎる自分は恋愛すらも無理なようだ。
桜沢は「物件はフロントの不動産でどうにでもしますから御心配なく。」そう言って去って行った。
それ以上何も言わずに・・・だ。
それに比べて斉宮は遠慮がない。配慮もないし、蔑みの気持ちを隠そうともしない。
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