アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
八
-
「ナンバーは控えたか。」
「はい。」
それ以上は必要ない。明確に私の意図をくみ取り、手配するはずだ。
まさかこんな所にいるとはな。
「トウゥ。」
「兎がどうかしましたか?」
チャウの問いかけには答えない。私がウサギ(トウゥ)と呟いたところで、本当の意味は自分以外しりえないのだから。
いつか・・・そう、いずれ。出逢った瞬間にわかると確信していた。
ウサギは白かった。
無気力に空を見詰めていた。それなのに、私を認めた瞬間・・・呟いた・・・「月」と。
10年以上前になる。大龍が余興で占い師を招いた。
そいつは言った。
「あなたは、ウサギに出逢います。月に埋もれるのがウサギの運命です。そして月はウサギを抱え込むことでより光輝き、多くの人間が夜空を見上げるでしょう。
眩しく妖しく光る闇の銀光。ウサギを見つけたら絶対に捕まえ、手離さないことです。」
どんな戯言かと、その時は気にもとめなかったが、ウサギを模した物やウサギという単語に敏感になっている自分がいた。占い師の言葉は体の奥底に刷り込まれてしまったのだ。
まさかこんな所で見つけるとは思ってもいなかった。
自分に分がある争いとはいえ、幸運のしるしのような今日の邂逅・・・運命だ。
中国において月のウサギは不老不死の薬を臼ですりつぶす姿とされている。
不老不死、輝く月、多くの人間が見上げることになる・・・。
無意識に口の端を歪めていたらしい。私にとって笑顔であるそれを見たチャウは青ざめて下を向いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 75