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二十四
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「しばらく見ないうちに・・・なんというかすっかり色っぽくなりましたね、驚いた。」
榊は開口一番そう言った。あんだけやりまくっていたら、変なものを垂れ流して当然だ。俺の血液には絶対皓月の細胞が取りこまれているに違いない。何でも吸収する腸壁は皓月の精子からコアを溜め込んだはずだ。
たった数日だというのに、俺は落ち着きを身に着け、自分を客観視できるようになっている。
それはまさしく皓月の姿であり、匂と同じく体内にも皓月が移り住んだのだ。
「お世辞をもらうためにここに来たわけじゃないのですよ。オヤジに隠れてここに来ているわけだから話しは単純明快にお願いしたい。
あれだけオヤジにつっかかっていた榊組長が何故権田にこんなうまい話を投げてよこしたのですか?俺はそれが解せないのですよ。」
小菅はアングリと口をあける寸前で思いとどまったようだ。驚いた顔で俺を見た後視線を逸らせる。
あまりアホい男のままだとまずいだろうと思ったのだが、当たり前の質問すらできない男だと思われていたらしい。残念をとおりこして、いささか悲しい現実だ。
「それは龍成会の意向というよりは先方さんの指名なのです。」
「先方?」
「香港。」
「指名の意味がわからない。権田はヤクご法度、絶対やらないと明言している。そこを指名とは、何かの余興ですか?」
榊はニヤリと笑う。その卑しい笑みと視線は俺をバカにしている、それと興味。それも性的な部類。
やれやれ。
「余興?とんでもない。やらないと言っている組を口説いたとなると、今後の商談にメリットになるからですよ。権田を口説き落としたとなれば相当ブツがいいか、商才があるかということになる。
人の噂は育ちますから、それが事実じゃなくてもいい。ブツがいいと広まればウチだってメリット。もちろん先方も、そして権田さんも。」
「なるほど。」
少しカマをかけてみるか。よく見て観察することにする・・・不本意な眺めだが。
「リスクはどうなんです?始めた早々に麻取にぱくられるのはごめんです。」
「大丈夫ですよ。先方は香港を仕切る大龍の人間だ。絶大な力を各方面にもっている。そちらに動きがあれば真っ先に知ることができる、そういう相手です。」
自信満々の表情を浮かべる榊は鳥肌がでるほど気持ち悪い。
そろそろ面倒くさい気持ちが好奇心を上回りそうだから止め時だ。やはり頑張ってもこんな程度であることに安堵した。
切れ者ならこんな中途半端なところで切り上げないだろう、そんな精神衛生上最悪な終わり方はしないはずだ。
「わかりました。俺がどんなに頭を振り絞っても何もでてきません。今回は榊組長を信じましょう。ただ表だって俺が動くわけにはいかないので、小菅にやらせます。手始めはそれでいいですか?」
「まったく、問題なし。商談成立ですね。近日中に先方と顔繋ぎの場を設けますので、楽しみにしていてください。」
これ以上何か言われる前に立ち上がる。
「では、俺は帰らせていただきます。小菅、あとを頼んだぞ。」
そのままのんびりといった風情で店内を歩き外にでた。
さて一人でどうするか、タクシーに乗るか。
どっちに帰るべきか?
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