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「じゃあ俺こっちだから。」
昨日の回想に耽っていた俺に、ヨウが声をかけてきた。
「あぁ、じゃあ……って。お前なぁ……。俺と同じマンションに住んでるって嘘だったわけ?」
「騙されやすい相手で助かったよ。アリガトウゴザイマシタ。」
なんて野郎だ。ムカつく。でもそうだよな、俺家の近くでも最寄り駅でも、お前のこと一回も見たことないから。
「帰り道トラックに轢かれてシネ。」
そう吐き捨てて、ヨウとは別のホームに降りた。
電車を待ちながら思う。ほんとダリィ。主に体が。女ってセックスの時毎回こんなに辛い思いしてんのかな。スゲェな。俺の何倍かは体が柔らかいから痛みもマシだろうけど。
一度家に帰った俺が、なんでまた街に出てきたかというと、風呂を上がった後に掛かってきた電話のせいだった。
──────────
シャワーを終えた俺はリビングに行くことが出来ないでいた。そりゃそうだろう。さっきはヨウの股間を蹴るとか言っていたけど、下手したら本気で掘られるかもしれないんだぞ。
どうするべきかと悩み続ける俺に、天使が舞い降りた。
ブー、ブー、ブー。
「もしもし。」
「あぁー、もしもしィ、俺だけどぉー…ヒィィック」
いつもならウザイだけでしかない酔っ払いからの電話も、今なら大歓迎だ。何十分でも話してくれ。
さすがのヨウも通話中に手を出してくることは無いだろうと踏んで、タオルで頭を拭きながらリビングに向かった。風呂場暑い。
ヨウは戻ってきた俺に気付いたが、電話を耳に当てているのを見て眉を寄せた。
「それでどうしたんですか、阿原教授。」
「いやぁー、ほんっとうに申し訳ないんだけどぉー、今から蔵に来られない?」
!!!
なんと!!!阿原神かよ!この部屋から出る口述を作ってくれようとは!
ちなみに蔵というのは俺のバイト先の二軒隣の居酒屋だ。
「…それは構いませんけど……何かありましたか?」
「荒太に渡すUSBあったじゃぁん?金曜日までに欲しいって言ってたからさぁー、渡すのはギリギリでもいっかぁ、って思ってたわけぇ。んで、俺忘れてたんだけどぉ、明日から学会で一週間帰ってこないんだったぁ!あっははは!!」
ナイス…!!素晴らしいミスをしてくれたぜ馬鹿阿原!俺はその馬鹿さ加減が、今最高に愛おしい!
あ、今日は火曜日ね。
「阿原教授ってほんと終わってますよね。でも最高です。今から取りにいきます。」
「マージーでぇ。すまんなぁ~、待ってるぅ。……あれ、そういえば今日話し方いつもと違うくねぇ?しかも阿原教授とかいう呼び方ぁ、されたことあったっけぇ。」
「何言ってるんですか、いつもと同じですよ。ちょっと酔い過ぎてますね。今から出るので。」
阿原が酔い過ぎているのは確かだが、言っていることは間違っていない。俺はいつも彼に敬語なんて使わない。呼び方だって、圭という下の名前だ。
実は、圭は俺の親戚なのである。小さい頃から知っているのに、今更他人行儀な対応なんて出来るわけがない。
でも今は、ヨウが会話を聞いているからな。相手が教授で逆らえない、ということにしておいた方が良いと判断したまでだ。
上手く逃げられますように。
──────────
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