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白が広がっている。
地面も空も全て白。周りには何も無いし誰もいない。
不思議な空間だ。
構造が気になって、歩き回ってみる。とりあえず前進、しかし白はどこまても続いていて、終わりが無い。まるで宇宙のよう。あ、無重力ではないけど。
どうすればいいんだ……?
訳が分からず、少し不安になってくる。
その時、頭の中に声が響いてきた。
「…た…………」
……た?
不鮮明で、うまく聞き取れない。
「……あ…た………あらた………」
あらた……。荒太。俺の名前だ。
この声、どっかで聞いたことあるような。
「…荒太……荒太……。」
んー誰だっけ。思い出せない。頭が働かなくて、つい眉間に皺がよる。
「……荒太……可愛い…………。」
…は?誰だか知んねぇけど、頭大丈夫か。俺が可愛いとか趣味イカれてんな。そんな事言うのアイツくらいしかいない……。
…そう、一人だけしかいない。
え、もしかしてヨウ?
「……俺は好き………。」
…………!!!絶対そうだ!
だって、だって、この言葉はさっき聞いたばっかりの……。
キョロキョロと首を回してヨウを探すけど、この空間はやはり無人だ。
何処にいるんだよ…。
「…ふっ。荒太、何処探してんの。」
「お前こそ何処にいんだよ。」
「……俺は、こっち。」
……こっち?そんな事言われても全然分からない。けれど、その声がほんの少しだけ右で響いた気がしたから、そちらに向かって進む。
「…そう、そのまま進み続けて。こっち…………。」
そのままって言ったって、誰もいねーし。何もねーし。
「……大丈夫だよ、荒太。」
俺の不安を汲み取ったのか、そう言葉を掛けてくるヨウ。
声だけでも俺を安心させることが出来るなんて、コイツは神様かなんかか。
「……じゃあね、荒太。」
……え?待てよ、何処に行くんだ。不意に頭を撫でられた気がして、上を向く。
けれどやはりそこは無で、頭にあった手の感覚もすぐに消えた。
ヨウ、ヨウ……。
「……好きだよ、荒太。」
はっ。
…………夢か。
今度は真っ白な空間なんかにはいなくて、少し前に見た天井と、照明。
ふかふかのベッドに横たわっている。
枕や毛布から香るヨウの匂いが俺の鼻を刺激した。ヨウっていい匂いするよな。香水とかつけてるんだろうか。
っていうか俺、なんて夢見てるんだよ……。一人で恥ずかしくなる。
誰に見られている訳でもないのに、必死で赤くなる顔を抑えようとした。
……そういえば、あの夢はなんだったんだろう。
ヨウから告白されたことは、俺にとってとても大きな出来事だったから、夢の中でも再生されてたのかな。
……あれ、でもじゃあ、右って何だ?
反射的に右を向く。
けれど隣には何も無いし、ヨウの姿も無い。
ヨウは今日バイトなのだ。あの告白の後、俺が眠る前にそう言っていた。
……右…………。
ま、いいか。ただの夢だし。
体を起こして、ベッドの脇のテーブルに置いてくれていた水を飲む。
んー……。まだ頭がぼーっとする。すっきりしたい。
あ、顔洗おう。
勝手に洗面所を使っていいか迷ったけれど、何でも好きに使えと言ってくれたのを思い出して、気にしないことにした。
冷たい水が肌を刺す。ひんやりとして一瞬体が強ばるけど、この爽快感を味わうのが好きだから、顔は水で洗う派だ。
……あ?
顔を拭いていると、鏡に映る自分の変化に気付いた。
これって………。
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