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ヨウに看病をしてもらってから三日。
……つまり、ヨウに好きだと言って三日。
風邪も完治し、俺は元通りの体になった。
そして、以前よりも確実に近くなったヨウとの距離に狼狽してばかり。
結局あの日聞けなかった俺らの関係は、未だに不明。
「荒太。」
「…おう。」
告白した次の日、火曜日から、俺達は一緒に昼飯を食うようになった。
場所は決まって大学の食堂。入口から一番遠い左端奥のテーブル。
お互い講義が終わってから、各自でその席に来て合流する形だ。
今日は俺の方が着くのが早かった。
ヨウと一緒にいて目立つのは相変わらずだけど、その視線の多さにももう慣れた。そこら中でひそひそ話が行われているのは、いつになっても慣れない。
俺らの関係……は別に、特に変なものはないよな。
付き合ってはいないわけだし、ただの友達だ。
うーん。
……そう、俺の気持ちだ。俺がヨウに惚れてることが周りにバレて、その話が出回っているのではないかと考えてしまうから。
自分が顔に出やすい方だとは思っていない。無表情だとか、目付きが悪くていつも不機嫌そうだとか、昔から散々言われてきたし。
それにしたって最近の俺は異常で、気が付けばヨウを視線で追ってるし、ヨウのことを考えている。だから、目線とか雰囲気とか、大丈夫だろうかと心配になる。
……俺がヨウをずっと見ていたとしても、ガン飛ばしているようにしか見えないかもしれないけど。
今日の昼飯は、弁当だ。体調も良くなったし、久しぶりに作ってきたのだ。
ヨウは今日はA定食で、いつも食堂のお気に入りメニューをローテしている。
「……珍しいな。今日は弁当なのか。」
「前は殆ど毎日だったよ。最近は体調悪かったり、色々あったから。」
「へぇ。」
興味深そうに弁当箱を覗いてくるヨウ。
コイツ、料理出来たし、何より……好きな人だし、手作りの飯を見られるのは凄く緊張する。
「スゲェ美味そう。荒太って料理出来るんだな。」
「一人暮らしだから一応。」
ヨウは、唐揚げもーらい、と言って勝手にそれを口に収めた。
え、嘘、不味かったらどうしよ……。
と不安になったが、やっぱり美味い、と笑って言ってくれたので一安心。
「…って、勝手に食ってんじゃねーよ。腹壊せばいいのに。」
思わず、ヨウに釣られて俺も笑いそうになったので、適当に悪態を付いておく。
「…なあ、今日荒太の家行ってもいいか?」
「……え、何で。」
「何でって…もう風邪も治ったみたいだし。学校以外で一切会ってないじゃん。」
確かに風邪は治ったけど…。
「…ダメなの?あ、バイトだったらその後でいいから。」
「いや、バイトは無いけど……。」
火曜日の朝にヨウの家で、スマホに灰里さんから連絡が入っているのを確認した。
今日から一週間旅行に行ってくるので、その間店は休みだとのこと。
体調が悪かった俺としては有難い話で、タイミングの良さに驚いたのだった。
「じゃあ何か用事があんの?」
「……いや、無いけどさ。」
「…煮え切らねぇな。行ったらだめ?」
「…別に、だめじゃない。」
……あ、そうだ。
「あの……何か、食いたいもん言って。」
「荒太が夕飯作ってくれんの?」
「一応、色々と…迷惑かけたし。礼だ。」
「まじか、超嬉しい。んー……。じゃあ、ハンバーグ食いたいです。」
「了解。」
ヨウは肉が好きなのだろうか。さっきも唐揚げ取ってたし。
そして意外にも、子供っぽいメニューが好きらしい。
「何時頃に来る?」
「一回帰るのも面倒だし、そのまま行ったらだめか?」
「別にいいけど、買い物しないとだし、その間とか料理してる間とか暇だろ?」
「料理してる荒太見てるから暇じゃない。じゃあ、買い物一緒に行こう。」
「見なくていいわハゲ!」
「ハゲてねぇし。」
何故だ。何故料理してる俺を見てる必要があるんだ。
ただでさえ、ヨウに手料理を振る舞うことに緊張してるのに、そんな事言われたら、固まって手を動かせなくなるじゃないか。
それに、一緒に夕飯の買出しなんて、ちょっと夫婦みたいだって思ってみたり。
いや、多分世の中の大学生達にとっては普通のことなんだ。友達同士で飯のためにスーパーに行くことは、泊まりの時なんか当たり前なんじゃないだろうか。
…………泊まり?
え、ヨウって今日帰るよな?もしかして泊まっていく?
いや帰るだろ。帰る。帰れ。帰ってくれ。
俺の家にはもちろんベッドは一つしかないし、泊まるなんてことになったら、また一緒に寝る羽目になる。
いや、ソファーで寝てもいいんだけど、前みたくヨウが嫌がりそう。
そんな事になってしまえば、多分俺は、まともな睡眠が取れなくなってしまう!
前は風邪でキツかったからすぐ眠れたけど、今日は絶対無理だから!
………………ヨウの寝顔はちょっと見てみたいけど。
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