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ピピピピッピピピピッ
「……ん」
どうやらご飯が炊けたらしい。
それから、ヨウは炊飯器の音で起きたらしい。
少し身じろぎをした後、薄らと目を開けて俺の顔を見た。
「……おはよう。」
「…はよ……ねみぃ。」
まだ眠気が残っているらしく、スッキリしない顔をしているヨウ。いつもより少し幼い印象を受ける。
珍しく可愛いじゃん。
その顔を見ていると、なんだか母性本能のようなものが湧いてきて、頭を撫でたくなった。
ヨウは欠伸をしながら起き上がった。膝から温もりが消えて、少し寂しい。
…ずっと膝枕してたら足痺れそうだけどな。
「ハンバーグ焼いたら飯食えるけど、眠いならこのまま寝るか?」
「…いや、食べる。」
「了解。」
ゴシゴシと目元を擦るヨウを置いて、キッチンへ向かう。
米を混ぜ、ハンバーグと野菜に火を通し、味噌汁を温めて、晩飯は完成だ。
……あ。皿どうしよ。
一人暮らしで、人を呼ぶことのない無い俺の家は、食器が少ない。まあ、料理するし全く無いわけではないけど…。
ま、適当でいいか。
ヨウと俺、種類の違う皿に作ったものを盛り付けていく。
「…荒太のエプロン姿っていいな。」
「……は?意味わかんねぇこと言ってないで、向こうで座っとけ。大体いつからいたんだよ。」
「ハンバーグ焼いてるあたりから。彼女の料理姿って見たいもんだろ。」
「…また、彼女って……って、何してんだよ!」
いつの間にかキッチンの側に来ていたヨウは、また彼女とか言って俺のことをからかった。
それだけじゃなくて、なんと、後ろに回って抱き締めてきたのだ!
「うなじとか…超エロい。」
チュ……。
わざと音を鳴らすようにして当てられた唇は、俺の首筋に何度も吸い付く。
「…ちょっと……もう、やめろって……!」
なんとか離れようと藻掻くけど、力の強いヨウには敵わない。
ヨウの吐息がくすぐったい。優しく触れる唇に、心までくすぐったくなる。
「一緒に買い物行って、飯作ってもらって、本当新婚みたいだよな。」
スルリ。
腰に回っていたはずの手が、後ろで結ばれていたエプロンの紐を解く。
まさか、今からするつもりか……?
「よ、ヨウ……。」
「何?俺の可愛いお嫁さん。」
「なっ……!」
驚きと照れで固まっていた俺は、クルリと回されて、ヨウと向かい合った。
照れてしまう自分が恥ずかしくて、顔を上げられない。
赤い顔を見られたくなくて俯いていると、頭を撫でられつむじにキスされた。
「……荒太、髪の毛いい匂いする。」
「し、しないから……。それを言うならヨウの……。」
はっ。何を言いかけてるんだ俺は。
確かにヨウはいい匂いがする。頭というより、全身?よく分からないけれど、なんだか落ち着く匂いがするのだ。
だからといって本人に言うんじゃない!
ヨウの匂いが好きなことがバレるだろ……。
「…… ん?俺の何?」
「いや、別に何も…!今のはちょっと口が滑って……!」
「気になるから言えよ。」
「だから、特に大したことは……。」
「俺にとっては大したことかもしれないだろ。……教えて?」
優しい声音で言われれば、それが故意のものだったと知っていても、従いたくなる。
「えと、その、ヨウの匂いの方が……いいなって、思って……。」
「へぇ。俺の匂い好きなんだ?」
「す、好きっていうか、その…落ち着くっていうか……。」
「……ほんと可愛い。」
ぎゅ、と力強く抱き締められて、耳元で囁かれる。
好き、って言いたくなくて、落ち着くって言ったけど……。ちゃんと言えばよかったかも。
今、何故かすごくヨウに好きって言いたい。
本人はきっと違う意味で捉えるだろうけど、ドサクサに紛れて俺の気持ちを伝えれば良かった。
代わりに、俺もヨウの体に手を回して力を込める。密着度が増して、嬉しい。
「…荒太。」
「…ん?……っ、んん……ぁ…ふ、ぅ……。」
名前を呼ばれて顔を上げれば、熱いキスの嵐が降ってきた。
チュ、チュ、と鳴る音に興奮が増す。
飲み込みきれずに溢れた唾液が、口の端から零れていった。
「っはぁ、は……も、ばか…。」
「荒太が抱き締め返してくれたから、嬉しくて。」
「……。料理、冷めるから…。」
「そうだな。折角荒太が作ってくれたのに冷めたら勿体無い。食べるか。」
肩の紐も取ってエプロンを外してくれたヨウは、二人分のハンバーグの皿を持って、向こうへ歩いていく。
ちょっとその気になっていた自分。
…料理が冷めるとか、言わなきゃ良かったかも。
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