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ギターを弾く男の話3
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それから数ヶ月が経ち、加藤は会社でひたすら働いていた。
相変わらず加藤はゲイだったが、パートナーはいなかった。
薄っぺらいストリートミュージシャンとは、あの痴話喧嘩から一ヶ月で別れた。クスリをやめられなかったからだし、それどころか、加藤にも勧めてきたからだ。男がクスリを勧めてきたことなど一度もなかった。だから加藤は男に惚れたのだが、それさえ無くなってしまったら加藤は男のことを見捨てるほかなかった。
「加藤、どうだ、今晩みんなで飲まないか。」
「いいですね。行きましょう。」
加藤は酒を飲むのが好きだ。飲み会に誘われればいつでも飲みに行った。そのおかげで上司に好かれたし同僚や部下とも仲良くなった。佐藤は男と別れてから、自分がのびのびとしていくのを感じた。
---他のコミュニティで受け入れられない?バカ言え、もう俺はどのコミュニティにも入るものか。
おかしな話、あの閉鎖的なコミュニティに入れば入るほど自分は他人の目を気にしていたのかもしれないと加藤は自己分析した。自分が少しでもコミュニティにいる他の人たちの気にさわるようなことをすれば、追放される。それを恐れる。加藤は他人の目を恐れる。
---クソ食らえ!
加藤はビールを飲み干した。いい飲みっぷりだねえと周りがはしゃぐ。加藤も笑う。楽しい。加藤は次々と酒を頼んでは飲み頼んでは飲みを繰り返した。彼はザルであった。
「オーホホホ、バカねえ、あんた、そんな男なんて付き合ったらダメよォ!」
「そうよそうよ、んもォ、ミュージシャンなんてみんな薬漬けよォ!」
加藤は、はしご酒をゲイバーで。
少し時間を溯ろう。ほんの一時間ほど前。
加藤はビールを飲んでいい気分になり、他の社員たちと一緒に帰路についていた。しかしいつのまにか風俗に寄っていく話になっているのを察して、加藤はフェードアウトするかのように集団から抜け出した。一駅ぶんフラフラ歩いて、明日は仕事が休みなので、もう一軒一人で飲もうかと思っていたところで、そのバーを見つけたのだ。その名も薔薇の園。なるほど。何がなるほどなのかわからないが、彼はなぜかなるほどとつぶやいた。なるほど。
そして、いま。
「ほら、加藤ちゃん、そんなしみったれてないでこのドレスにお着替えなさい!」
「え、いや、俺にはそういう趣味はッ!」
「オーホホホ!あんたにゃなくてもこっちにはあるのよ!これね、あたしの新作なのよぉ〜!」
「ウッ、ウッ、ウワアア〜〜〜」
加藤は大男---いや、女か---に引きずられて店の奥へと入っていった。確かに綺麗なドレスではあるが、加藤は自分が着るのは御免だとわめく。他の客はゲラゲラと笑っている。加藤はすね毛を剃られた。
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