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「おーい、黒〜。早くしねえとパン売れ切れるぞー!!」
「わかってるつーの!今着替えてるから、ちょっと待って!!」
昼休憩五分前。
体育の授業を終えた男子生徒二名は他の生徒より早く購買に行こうと忙しなく手を動かして制服を着る。
「まだ〜?」
「うっせえ!焦らせんな!」
一人の男子生徒は着替え終わり黒と呼ばれた男子生徒は焦ってボタンを掛け違いながらもワイシャツを着てその上にかけ違ったボタンを隠すように黒色のパーカーを羽織った。
チャックが胸あたりまで上がったのを合図にチャイムが鳴りそれと同時に財布を持って二人は走り出す。
階段を数段飛ばしに駆け下りて生徒指導の先生に怒鳴られながら購買に一番で辿り着く。
目的のパンが買えて嬉しそうに笑う黒。
その隣で自分も買えたと笑う男子生徒。
高校三年生の春。
「…なんだ、元気そうじゃない。」
そんな眩しいくらいの日常を一人端から見守る違う制服を着ている生徒。
笑っているのに心なしか泣いているようにも見える表情は誰にも見つけられる事は無くその場を去っていく。
昼時だと言うのに彼が通る道は混雑していなかった。他校の制服、彼の容姿。その二つが彼から皆を遠ざけていたのだ。
誰にも声をかけられる事は無く彼も他の生徒に話しかける様子も無く歩く。
暫く歩いた所で先程の二人の大きい声が聞こえた。
どうやらボタンを掛け違って居たのに気付いて笑っているらしい。
「…そうか。くろちゃんは相変わらずおっちょこちょいなんだ、変わってないね。」
目的の部屋の扉を開ける前、誰に話しかける訳でも無く呟いた言葉は扉を開ける音待ち構えていた人達の声で掻き消された。
「いらっしゃい、津雲 白くん。我が校へようこそ。」
「ーーーはい、よろしくお願いします。」
彼はポケットの中に入ったくしゃくしゃの古びた手紙をスラックスの上から握り締め、それを隠すようにお辞儀をしてにこりとまるで花が咲いたような優雅な笑顔で返事をした。
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