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嘘の真実。 *光汰side*
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浴槽に溜まっていく湯を無感動に見つめながら、俺は考えていた。
本当に…これで良かったのか?
「っいやいや、良いわけないだろっ!?」
頭をぶんぶんと振ってその場にしゃがみ込む。
こんな三文芝居、いつかはばれる。
それこそ坂口なんかに知れたら、一発で見抜かれるだろう。
それに…隠されていたことを春ちゃんが知れば、きっと傷つく。
それが分かっていても、嘘を吐かずにはいられなかった。
春ちゃんがパニックを起こした時、春ちゃんには俺の声が全く届いていないようだった。
それどころか俺じゃない何かを見ていた。
もしまたそうなったら…俺は今度も、きっと何もできない。
俺が春ちゃんにしてあげられることは、何もない。
それならせめて、少しでも春ちゃんの心の負担を減らしたい。
男が男に襲われた、なんてあまり知られたくないと思う。
それは幼馴染の俺も例外ではないだろう。
またパニックを起こしかねないし、今はあまり刺激を与えない方が良い。
それに…これは決して自惚れなんかではないけれど。
自分が誰かを責めるようなことを言ってしまったと知れば、優しい春ちゃんはきっと傷つき、自分を責めるだろう。
そんなことはして欲しくない。
春ちゃんは多分、この十数年間ずっと自分を責め続けてきた。
………誰も、自分を責めてはくれなかったから。
「……。」
湯船の三分の二ほど入ったところで立ち上がり、湯を止める。
……とにかく今は、春ちゃんの心と体のケアが最優先だ。
両手で頬を軽く叩いて気持ちを切り替えると、俺は春ちゃんの待つ部屋へ足を向けた。
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