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「やべぇ……追わないと、」
「ちょっと、世留。ヒナちゃん……そっとしておいてあげたら?一人になりたい時だってあるよ。」
「でもあいつ、」
「……過保護は良くないって言ってんのわかんない?」
過保護?俺が?
俺の腕を力強く掴む真緒は、いつもとは違う険しい表情で俺を睨みつけていた。
陽汰は今にも泣きそうだった。
でも、それを既のところでなんとか堪えていたんだろう。
きっと、泣くところを見られたく無かったからだ。
……それは俺の前だとしても同様かもしれない。
「……悪い。冷静になった。」
「よかった。……それにしても、健二クーン?何しでかしてくれちゃってんのかなぁ〜?」
「クッソ、離せ!このチャラ男め!」
「ちょっとおいたが過ぎるんじゃないかなぁ。このバカ犬くん。」
真緒に首根っこを掴まれて暴れるチビは多々良健二といって、一年の時のクラスメイトだった。
ちょこまかと動き、こうるさいことからよく犬扱いされている奴だ。
何故か俺に懐いており、学年が上がる前はよくつるんでいた。
確かに、最近バイトやらで忙しくてあまり構えていなかったが、まさかいきなり教室に押しかけあんなことをのたまうとは。
何と言うか……悪い奴じゃないが、何事にも直球な奴なのだ。おまけに凶暴。
大方、俺達に放ったらかしにされ拗ねていたのだろう。
「健二……こんなところにいたのか。また暴れたんだってな。」
「洋祐!……真緒、てめーチクリやがったな!」
教室の扉が勢いよく開いたかと思えば、息を切らせて走ってきたのは又もや見知った顔だった。
片手にはスマホを持っていることから、真緒から連絡を受けて慌てて来たのだろう。
健二と対象的に、背の高いこの男は三浦洋祐。
健二の幼なじみ兼世話係のようなものをしている。
健二の側にはいつも洋祐がおり、親や教師までにも健二の面倒を任されているほど。
つまりは狂犬のストッパー役だ。
「べーっ、だ。洋祐も狂犬放し飼いにしちゃダメでしょ。」
「悪い。俺が目を離した隙にいなくなってたんだ。」
「お前も苦労してんだな。ったく、洋祐にあんまり迷惑かけんじゃねえぞ、健二。」
「だって……お前らが全然遊んでくれねぇくせに、あんなオタク野郎と仲良くしてるのが悪いんだろ!」
再びヒートアップする前に、洋祐の拳が健二の頭上に落とされる。
口で言っても分からない時は力で黙らせるのが洋祐流。
どうやら相当痛かったようで、健二は頭を抱えて蹲ってしまった。
「健二。見た目で人を判断するな。お前もチビって馬鹿にされたら腹立つだろ。」
「うぅ……だって…、」
洋祐が健二を諭すが、納得がいかないのか顔は険しいまま。
痛みのせいか、それとも憤りからか健二の目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
……今回は、俺も悪いよな。
付き合いが悪かったのは事実だし、最近は陽汰との約束を優先していた気がする。
それに、3月まではいつも一緒につるんでいたのに、健二からすれば仲間外れにされた気分だったのだろう。
そんな中で俺達に共通の新しい友人が出来て、きっと寂しい思いをしていたはずだ。
「俺らも、悪かったよ。別にお前をハブにしてた訳じゃない。健二と洋祐だって大事な友人だと思ってる。」
「うん……、」
「ただ、陽汰もお前らと同じように大事な友人なんだよ。だからさ、さっき言ったこと陽汰に謝れるか?」
「……わかった。確かに、俺も言い過ぎた。あいつのことは認めないけど、ヒドイこと言ったことについては謝る……。」
しゅんと項垂れる健二はさながら、飼い主に怒られた犬のようだ。
反省の言葉を聞いて、先程まで怖い顔で腕組みしていた洋祐の顔が和らぎ、その大きく無骨な手で健二の頭を撫でた。
ガキ扱いすんな!と怒る健二と一方で涼しい表情をした洋祐を見ていると、兄弟のようだと思う。
「明日、絶対に謝れよ。」
「わかったって!」
再度念を押すと、健二はうんざりとした顔で何度も頷く。
何となく腹が立ったのでその頭を軽く一発殴り、喚き声を背に教室を後にした。
こっちはいいとして、問題は陽汰の方だろう。
陽汰の性格を考えると、健二の小学生レベルの憎まれ口すらも間に受けている可能性が高い。
真緒には一人にしてやれと言われたが、何となく嫌な予感がするのだ。
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