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可愛い義彦さん 7(義彦side)
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お見合いは、家族との挨拶が終わったらすぐに二人っきりにさせられた。
相手の女は、この見合いを成功したいらしく俺にべたべた触ってきたり、
趣味はなんだ?好きな食べ物はなんだ?と質問攻めしてきたり、
俺との共通点を探し出そうと必死だ。
そういう俺はというと、適当に流しつつ頭の中は桂でいっぱいだった。
今頃、あいつ何しているんだろうか。
もしかしたら実家に帰ってしまっているかもしれない。
こんな見合いさっさと終わらせて
いっそのこと、逃げ出してしまいたいくらいだった。
「ねぇ……、義彦さん、聞いていらっしゃる??」
俺が上の空なことに気付いたのか、顔を覗き込んでくる。
女は、普通の男なら誰でも好きになってしまうくらい
美人でスタイルもよさそうだった。
それを女自身もわかっているのか、
谷間を強調して俺の腕になすりつけてくる。
こういう手の奴は、温和に答えてもだめなのだ。
「……悪いが、聞いていない。
正直、君とは、この見合いきりだ。
証拠に君の名も君の親も何一つ覚えていない」
俺の腕に絡みついてくる女を優しく剥がしながら
「しかし、君が嫌いというわけではない。
女と結婚に興味がないだけだ」
そういうわけで帰らせてもらうと部屋を出るときに
今まで黙っていた女が口を開いた。
「義彦さん、私、藤ヶ崎悠っていいます。
あなたのこと、私あきらめませんから」
女がそういって駆け寄って俺の唇を奪ってきた。
「好きにしろ、興味ない」
女に背を向け、ドアを閉める。
しつこそうな女だと思いつつも、俺には関係のないことだと思う。
先ほど奪われた唇がむずがゆくなり始めてハンカチを取り出してぬぐう。
「あら、悠さんは??」
ロビーを歩いていると、母親と相手方の両親が話していた。
母親は俺に気付き、駆け寄って声をかけてくる。
「失敗だ」
母親にボソッと告げると、母親は眉を困らせている。
「藤ヶ崎さん、急な仕事が入ってしまったので
申し訳ないのですが、帰らせていただきます」
少し離れたところでどうしたのだろうと不思議そうな顔をしている両親にそう嘘をついて、そそくさと逃げるようにその場を立ち去った。
ホテルを出ると、もう暗くなり始めている。
意外とこの見合いに時間がかかっていたようだ。
「無駄な時間だったな」
ぽつりとつぶやきながらタクシーに乗り込む。
「……義彦さん~!また会いましょうね~!」
どこからか、そんな大きな声が聞こえてきて窓の外を見ると、
ホテルの出口で藤ヶ崎悠が手を振っていた。
タクシーが通り過ぎていく中で
どこかの令嬢のくせに活発な女だとあきれながらも
なぜか悪い気はしなかった。
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