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葉月の夢夜
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ー魔界・ブェルブニ城・バルコニー
闇夜に浮かぶ暁を眺め、赤ワインを嗜む親子。
何かを語る訳でもなく、今の時間を楽しんでいる様にも思える。
ー…八月の夜。
段々と秋に近付いていく季節。
「此処に居たのですね、母様!」
「彼方此方、探しましたよ」
一生懸命、城の中を探し回ったのだろう。
少々乱れた髪が口に掛かっている。白い手が女性の髪へ伸びた。
「…ファーストレディーが台無しじゃないか。ミヅミ、ゼーダ」
仄かに笑みを溢し、彼は耳に髪を掛けてあげた。
「んもぅっ!母様は狡いですわ!愛娘達が必死に探し回ってたのに…。セイテーラ兄様と晩酌なんて…」
「そうで御座いますわ!今宵が何の日か、ご自分で解ってらっしゃるのですか?」
「…」
愛娘達にどやされるハヅキはぽかんとした表情をした。
「ー…二人とも、母様は自分の事に関しては鈍感なんだから…」
「セイテーラ兄様、鈍感にも程がありますわ!」
「…そうです」
何に対して、そうピリピリしているのか、さっぱり解らなかった。
首を傾げている母親を見てミヅミとゼーダは呆れ返った。魔界でも四季は感覚で掴めるのは勿論、目に映る母親も解っている筈だ。
じゃあ、何故、自分達が慌てて探していたのかも察して欲しいと思った。
今宵は一年に一度ある誕生日…。
兄妹を生んでくれた母親が誕生した日。
「母様、今宵は何月で御座いますか?」
「えっ。んー…この肌寒さからいくと、八月かな」
「では、八月は誰の誕生日で御座いますか?」
「…あっ」
セイテーラに促されハヅキは思い出す。
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