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②
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最初は。
序盤のうちは良かったんだ。
(やばい……)
しかし、手持ちのカードが減り始める終盤から、全く同じ数字が揃わなくなってきたのだ。
幸い、ジョーカーは手元に無かったが、それでも残りの枚数を見るに、俺が不利であることは明らか。
座っている並びから考えて、取っていく順は単純。
俺が一ノ瀬くんから、早坂さんが俺から、生駒さんが早坂さんから、世良さんが生駒さんから、そして最後に一ノ瀬くんが世良さんからカードを取る。
「……はい、一ノ瀬くん」
世良さんの手持ち札が向けられ、一ノ瀬くんは迷うことなく1枚を抜いた。
どうやら数字は揃わなかったらしく、そのカードは一ノ瀬くんの手元に残る。
「……ババですか……?」
そんなことを聞くのは駄目だとは思うけど、聞かずにはいられない。
一ノ瀬くんはふふっと笑い、首を傾げた。
「さぁ、どうでしょう」
その表情は、心なしか楽しそうで。やたらと余裕ぶって見えた。
というか、思いの外4人はババ抜きに強かったのだ。
一ノ瀬くんも早坂さんも、何を引いたって表情を変えないし、世良さんは態度がわざとらしくてババを引いたのか何なのかも分からなかった。
生駒さんは表情の変化は大きいのだが、いざ引くとなると、ずっとにこにこと笑っていて。
(あれは嫌だ……)
俺は、チラっとテーブル上の瓶へ目を遣る。
あんなのを盛られるなんて、身体に何が起こるかも分からないし怖い。負けるのは絶対に嫌だった。
「……ぅぅ……」
弱々しく唸って、俺はそっと一ノ瀬くんの持つトランプに手を伸ばした。
その際、見上げる感じで視線だけを一ノ瀬くんに向けてみるが、その表情に何ら変化はない。無表情だ。
どうせ、引くまでは何が起こるか分からない。
もうどうにでもなれ、と言うように俺は1枚を引いた。
そして、恐る恐る表に捲る。
俺が引き当てたカードは。
(最悪……)
見事にジョーカーだった。
▽ ▽ ▽
その後も何とかジョーカーを保守し続けてしまい、結果的に負けたのは俺だった。
おふざけ顔のピエロは、俺を嘲笑うかのようにこちらを見詰めてくる。憎たらしい。
「はい、陽裕くんのコップ、こっちに寄越して」
「本当にやるんですか……?」
「うん、勿論」
そう言う世良さんの手元には既に、小瓶と小さなスポイトが握られていて。俺は、嫌だと思いつつも従うしかなかった。
周りの視線が注がれる中、おずおずとコップを世良さんの前に差し出す。
「……どうぞ……」
「ありがと」
世良さんはいつも通りの笑顔で笑いながら、スポイトで液体を吸い上げる。
その透明な液体を見ると、緊張感からか何なのか、俺は息を飲み込んだ。
あんなものを口にしたら、もしかして死んでしまうのではないか。
そんなくだらないことまで考える。
「じゃあ、まずは一滴ね」
俺は、液体がコップの中に落ちていく様をじっと見詰めた。それなりに張り詰めた空気が流れる。
本当に、たった一滴で何か変わるのだろうか。
(うわ……)
そして一滴、媚薬は麦茶に溶けた。
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