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「お前何ビビってんの?ただ睨まれて引っ張られただけじゃねぇか」
「…や、こいつやべぇから止めた方が良いって」
「怖じ気づいてんじゃねぇよお前」
俺に怯えるそいつを押し退けて俺の前に2人が立つ。
俺よりも身長が高くて、俺が見上げることになり、それに優越感でも抱いているのか見下すように俺を笑う。
「こういうやつは殴っときゃあ黙るんだ…っよ!」
ーゴッ…ー
「わんこ…?」
1人が拳を振り上げたその直後に鈍い音。
それに桐華さんが顔を上げて、視界を塞いでいるそれを退けようと俺の手を握ってくる。
その桐華さんの手をずきずきと痛むもう片方の手で握り、大丈夫だと言って下に落とす。
殴られたのは俺じゃなくて相手。寸でかわして顔面に拳をめり込ませた。
久しぶりに人を殴った手に、鈍痛が響く。今まで数えきれないほど喧嘩して、殴ってきたけどこんな痛みを感じるのは初めてだった。
「…で、誰を殴ってどうするって?」
殴ったそいつを殺気をこめて睨む。
と、そいつは一瞬顔を強張らせたが、すぐに「調子乗ってんじゃねぇよ」と強気に出た。
「…おい、マジで止めた方が良い」
「ああ?」
俺の胸ぐらを掴んだそいつを、俺にまだなにもされてない奴が止めに入る。俺の方をチラチラと見て俺の機嫌を伺ってるようにも見えた。
「最初は分からなかったけどよ、ピアスの量と目の色からしてこいつあれだって…。"最恐"の1人だって…!!」
「はっ?こいつが…?」
「もう1人のやつと出来てるって噂でこの女とマジで付き合ってねぇかもしれねぇけどよ…女じゃないにしろそんなやつの知り合いに手出すのはやばいって…殺されるぞ…?!」
俺に怯えきってるそいつと俺を交互に見る。
「だから、何だ」
否定も肯定もせずにもう1度睨んでやると肯定と受け取ったのか急にそいつは顔色を変え凄い勢いで俺に謝ってきて、走って逃げていった。
呆気ない。1発ですんだ。
まあ、喧嘩にならなくて良かった。
「目塞いで悪かった。大丈夫?とーかさん」
深呼吸して瞼を閉じて昂った気持ちを落ち着かせ、桐華さんの目から手を離して、桐華さんに微笑む。
「…あんた目怖いわよ」
「……悪ぃ」
眉間をグリグリと桐華さんに押される。
怖がらせないように、怒りを鎮めてから顔を見せたつもりだったんだが抑えきれていなかったらしい。
愁に切れたら手をつけられないと言われたことが何度か有ったが、今がその状態なんだろうか。
もしそうなら俺はここで暴れてしまっていたはずで、そうならなかったのはここに桐華さんがいて、それがブレーキになったからだろうか。
"嫌われたくない"。その思いが。
「…悪かったわね巻き込んで。怪我はない?」
「平気。…とーかさんも大丈夫?」
「私は大丈夫よ」
「そう」
ペタペタと俺の頬を触ってくる桐華さんにふにゃりと笑って綺麗なストレートの髪をくしゃりと撫でた。
「とーかさんは鬼で怖いけど凄く優しい人で俺は大好きだから先あいつらが言ってたこと気にしなくて良いからね」
「……たらし」
「えっ」
「あんたがモテる理由分かった気がするわ」
「え、何それどういうこと?」
「五月蝿い天然。無自覚」
「ちょ、えー…とーかさんー…」
あいつらに言われたことを訂正しただけなのに何で俺そこまで言われないといけないんだろ……。
すたすたと歩きだしてしまった桐華さんを駆け足で追いかけて言われた理由を聞いてみるが無視され、俺がそれを知ることはなかった。
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