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無愛想にしおりをはさみました!
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無愛想
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朝早くに来た教室は誰もいなくて、静かで、何もかもを忘れられる気分だった。結局すぐに寝付けず、ようやく眠りに入ったのが午前3時。しかし5時にはもうすっきり起きてしまいどこかに散歩する宛もなく暇故に、一番乗りの で学校に来てしまったというわけだ。
まだ少し薄暗い。窓の外では小鳥がぴよぴよと鳴いている。静かな空間に眠気は迫ってきた。うとうとしながら眺めるグラウンドはぼやけてはピントがあって、ぼやけてはピントがあうの繰り返しだった。
大きな口を開け欠伸をすれば自然と涙が出てきた。眼鏡を外し目をこするようにして涙を拭き取った。
すると、
「山崎く~ん」
聞き覚えのある声が俺の苗字を呼んだ。
その人物は机を避けながら俺の前に立った。目の前に大きな影が出来る。ゆっくりと目を開けるとそこには月宮彩月がいた。
彩月
「昨日大丈夫でした~? いきなりぶっ倒れるもんだから心配したんですよ~」
いつもへらへらしている彩月の顔は珍しく困った顔をしていた。大きな瞳が俺を見つめる。
優人
「昨日は運んでくれたんだってな。ありがとう」
相変わらず無愛想な返事をした優人に対し大丈夫ですよと優しい声で返した。
彩月
「ねえ山崎くん」
いきなり低くなった声に少し驚きながらも、優人はなんだと返事を返す。彩月が真剣な声で優人の名前を呼ぶ。
彩月
「山崎くんはあの時なんて言おうとしたんですか~?」
昨日の屋上の件だ。
やっぱり覚えてたのかと優人は軽くため息をついた。
優人
「…なんのことだか、覚えてない。
…俺、先生に呼ばれてるから、先行くわ。ごめんな」
また無愛想な返事をして、優人は席からたった。
ちょうど教室を出る時、彩月はすこし悲しそうな声で
彩月
「山崎くん、またあとでね~」
そう呟いた。
優人
「あぁ」
俺は教室をあとにした。
彩月
「ハハ……山崎くん、嘘つくの下手くそだな~。気づいてるくせに、俺が本気だってこと………。ほんと、酷い人……」
誰もいなくなった教室でぽつりと言葉を落とした。
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