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「それより、翼」
「はい」
「シャワーを浴びるか?それとも朝食にするか?」
のんびりと問われ、ハタと現状に気がついた。
見れば、スラックスにお洒落なワイシャツ姿のしっかりした格好の火宮。
上着とネクタイこそないものの、きっちりと服を着込んでいる。
それに対して俺は、掛け布団で隠してはいるが、ベッドの上に素っ裸のまま。
「えっと…」
「一応拭いてはあるが、シャワーでさっぱりしたければ、浴びてくればいい」
「あっ、ありがとうございます」
そういえば、そんな後始末までしてくれていたんだった。
申し訳なさと感謝に下げた頭が、ふと違う方にも向かう。
「あの、服…」
見回す限り、俺が着ていた服は見当たらない。
泊まりと思わなかったから、新しい服の用意もない。
「昨日のスーツはクリーニングに出した。今日着る服は用意してある」
「えーと、どこに…」
「シャワーを使うなら、風呂場に持っていっておいてやる」
いや、それはありがたいんだけど。
「そこまでどうやって行けば…」
モジモジと困惑していたら、火宮の激しく呆れた目が向いた。
「そのまま歩いて行けばいいだろう?バスルームは向こうだ」
心底変なものを見る目をやめて欲しい。
だって俺、全裸なのに。
それでリビングを横切って、さらにその向こうのバスルームまで行けって、普通戸惑うと思う。
「このまま…?」
「ん?なんだ、恥ずかしいのか?おまえの身体なら、昨日隅々まで見た。今更だ」
だから!そういうデリカシーのないことを、綺麗な顔でサラッと言わないで欲しい。
「ほんとっ、Sッ!」
カァッと頬を熱くする俺も、どうせ面白くてたまらないんだろう。
火宮は愉悦を含んだ笑みを隠しもしていない。
「この程度で狼狽えていたら、到底俺にはついて来れないぞ」
「っー!」
「ほら、シャワーを浴びるなら、早く行って来い」
言うが早いか、バサッと捲られてしまった上掛けが、そのまま床に捨てられてしまう。
「やっ…」
服を整えた火宮の前に、裸を晒す羽目になった俺は、恥ずかしくて居た堪れなくて、火宮の視線から逃げるように小さく身を縮めた。
「羞恥に震えるその姿もいいな」
そそる、と笑う火宮は、本当に意地悪だ。
「ッ、風呂!風呂、行って来ますっ」
火宮の視線から逃げるように、俺は慌ててベッドから滑り下り、ドアに走ろうとした。
「ウッ…」
「大丈夫か?無理するなよ」
「だ、大丈夫、です。離して…」
腰が痛い。足がフラつく。
「ククッ。意外と負けず嫌いか?調教し甲斐があることで」
「ッ、調教って…」
「こう恥ずかしがるなら、家では全裸で過ごさせるのもいいな」
妖しい光が、火宮の瞳にゆらりと浮かぶ。
「ッー!ヘンタイッ!」
やばい、思わずなんてことを…。
うっかり口走ってしまった言葉に気付いて、冷や汗がドッと出た。
怒らせたか、と恐々窺った火宮の顔は、それはそれは楽しそうに緩んでいた。
「この俺に面と向かって変態か。本当、おまえの度胸には感服するよ」
「うっ…すみません…」
「そうだな。だが度を超えるなよ?あまり無礼な物言いが過ぎるようなら…」
ゴクリ。だからそうやって、思わせぶりなところで発言を切るところがSだって言うんだ。
今の今で、それを口にはできないけれど。
「火宮、さん…?」
「ふっ。あまりに度が過ぎた無礼な発言には、お仕置きだな」
「ッ…」
お仕置きって…。
何をされるんだかさっぱりわからないけれど、なんだか怖い響きしかないそれに怯んだ俺は、ブンブンと首を振って、急いで寝室を飛び出した。
「ククッ。飽きないな」
重たい身体を引きずって、なんとかバスルームに向かっていた俺は、寝室に落ちた火宮の呟きを知らない。
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