アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
闘神さまが微笑った-8(完)
-
『おれのゆめ』
夢を書こうとしてたシートはシロの机の隅に寄せてあった。
「夢か……」
シロと一緒に沢井流の先生出来たらいいな、って夢はまだちょっとだけ残ってる。
だけど実力がないんだ。
こないだの試合の結果は花の人が旗3本で俺は敗退だった。
型だけは自信があったんだけどな。
組み手も出来ない、型も全然駄目じゃあ話にならない。
「あれ?」
シートを手に取った時、何か違和感を覚えた。
紙に微妙な凹凸があるんだ。
これは怪しい。
俺が知らない間に誰かが何か書いて消した?
ペン立てから鉛筆を1本抜いて、凹凸のある辺りをコシコシとやってみた。
「あ……」
『葵琉といつまでも一緒に暮らす』
「葵琉?」
「シロ!」
浮かび上がってきた文字を見て硬直していた俺はいつの間にかシロが背後に立っているのに気付かなかった。
「見られちゃったか」
書いたはいいけど恥ずかしくなって消したんだと、シロは照れたように話す。
「……俺も……」
「ん?」
「俺もシロとずっと一緒に暮らしたい!!」
「けど……」
けど、俺には沢井流の才能がないから……。
宗家の子であるシロと一緒に暮らすには沢井流がもっと上達しないと。
「いいんだよ、そもそも俺は道場の仕事を長く続ける気はないし」
「そうなの?」
悠夜おじちゃんが跡継ぎの第1候補だって噂もあるけど、やっぱり宗家に生まれたからにはそれなりの責務は付いて回るんだと思う。
「好きな紅茶に関わる仕事をするのが夢なんだ」
「一緒に暮らそう、葵琉」
あの時、闘神さまが微笑ったのは、この事を教えてくれてたんだ。
試合では負けたけど、金メダルよりもずっと明るい未来を手に入れた。
道場に向かうシロを見送って、俺は闘神さまのもとを訪れた。
「闘神さま、久しぶり!」
(完)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
59 / 86