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俺の声を聞け 12
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殴られながらうずくまっていると、カナの甲高い笑い声が聞こえてくる。
「修平。千秋ちゃんを守りたかったら私に土下座しなさいよ。私に付き合ってくださいってお願いしなさいよ」
殴られたり蹴られたりする中、修平に向かって言うカナの声だけがはっきり聞こえて悔しくてたまらない。
ここまで来たのに、結局何もできなくて悔しい。
体中に受ける痛みよりも、その悔しさの方が痛い。
俺は何をしにここに来たんだ⁉︎
助けようと思って来た。
取り戻そうと思って来た。
それなのに、俺の窮地が修平に選択を迫るなんて。
せっかく近付いたと思ったのに、また離れてしまうのか……。
歪んだ視界の中に、人の拳が目に入った。
また、殴られる……。
…───反射的に目を瞑った、その瞬間だった。
ドサッと人が倒れるような音がして目を開けると、なぜか俺に殴りかかろうとしていた男が倒れていた。
何が起こったのかと顔を上げると、そこには目つきが変わった修平がいて。
さっきまでぐったりしていたのに、まだ後ろ手に縛られたままなのに。
「千秋に触るなと言っただろう‼︎」
そう言うと修平は次々と俺の周りにいたやつらにぶつかっていく。
その修平の行動はそこにいた全員が驚いたようで。
「もうコイツ動けなかったんじゃねぇのかよ」
「知らねえよ。つか、こいつ目がイッてやがる」
周りの男たちに手当たり次第ぶつかっていった修平の目に、今度は俺の襟をつかんでいた男が映る。
すると修平は真っ直ぐその男に向かい、俺の襟をつかむ腕に噛みついた。
驚いたそいつが俺を離すと、手からは血が少し垂れていて……。
「痛って……えっ⁉︎ 血⁉︎ こいつマジで噛みちぎる気だぞ」
「千秋に触るな……」
修平は縛られてフラフラになりながらも俺の前に立って、形勢は一気に逆転する。
修平のあまりの気迫に男たちが後ずさりしたからだ。
それを見て今度はカナの方が焦り始める。
「何やってるのよ!? 早くやりなさいよ」
そう言っても修平が立ちはだかって近寄ってきた男にぶつかっていき、また噛みちぎろうとするその気迫は異常にも見えて。
「こいつマジでやべーよ」
そう言いながら男がひとり、またひとりと逃げようとした。
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