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「凛くん」
「なんだ。うっせぇ」
「手、痛い? ごめんね」
「いや……そうじゃない。違うんだ」
やさしく気遣ってくれるばかりの鶴見の手を俺は傷ついたままの右手でさすった。
そんなに自分を責めなくていい、という気持ちを込めて。
「俺さ……」
「ん?」
「ずっと俺だけはちゃんとしないとって思ってた。俺がしっかりしないとみんなが困る、不幸になっちまうんだって……」
ずっとそう信じていた。
だが、いま、それは違うと分かる。
俺の頭を支配していたのは、母さんの偏った物の見方だった。
俺を追い込み、反抗心を抑え、家庭のなかに閉じ込めておくための洗脳。
今までそれを無抵抗に鵜呑みにしていたに過ぎない。
実際は、健太たちも、弟たちも、鶴見も、俺がいなくたってちゃんとできる。普通に生きていける。
俺がいなくたって──。
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