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俺たちのバランス〜むつ〜
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大きい声を出してしまったから、店員の1人が様子を見に来た。
だけど修二が、「うるさくしてすいません、ちょっと転んじゃいまして」と言って謝って誤魔化した。
修二「美樹ちゃんもごめんね。最後にさ、いくつか聞いておきたいことがあるんだけど、聞いてもいいかな?」
美樹「何?」
美樹は勝ち誇ったような表情で、修二に聞き返す。
俺はそれを、マキに抱えられるように席に座らされてただ項垂れて聞くことしかできない。
二人掛けの椅子の壁側に押し込められ、修二が俺の隣に座る。マキが立ったまま、修二の話し出しを一緒に聞いていた。
修二「むつは、何杯ぐらいお酒飲んでた?」
美樹「…え?それ聞いて意味ある?」
修二「ああごめんね、この後むつとも話し合うから、本当は記憶あるのに無いって言い張ってるかもしれないし、何杯でどんなふうに酔うか僕は良く知ってるから、美樹ちゃんに聞いといたらむつは言い逃れ出来ないでしょ?教えてくれると助かるな」
修二と俺は修復不可能だと、美樹の明るい声がする。
美樹「そう、……私もむつ君のお酒数えてた訳じゃ無いから正確じゃないけど、…10本位じゃないかな?結構飲んでたし」
修二「ビールだけ?」
美樹「え?…う〜ん、むつ君は甘いのかな…」
修二「じゃぁ日本酒とか強いの飲んで悪酔いした訳じゃないんだ」
美樹「……大輝が飲んでたから、ちょっとは飲んだかもね」
修二「それで飲み過ぎて一番最初にむつが寝ちゃったんだよね?」
美樹「ふふ、そうそう、私の肩にもたれてスヤスヤと」
修二「それで大輝君と胡桃ちゃんが寝た頃、むつが起き出して、美樹ちゃんを襲ってキスしたと」
美樹「そうそう、それはそれは濃厚に」
修二「濃厚なディープキスね」
美樹「そうよ」
修二「それからむつが、スカートの中に手を入れた?」
美樹「…。スカートじゃなくてTシャツよ」
修二「そっか、それで胸を触られた?」
美樹「…ちょっと、どこまで聞くつもり?」
修二「ああ、ごめんね。あとちょっとだけ。体を触られて、むつが覆いかぶさってきてシたんだよね?」
美樹「……そうよ。何?何なの?」
修二「で?いつシャワーしたの?」
美樹「は?…………そんなの終わってからよ」
修二「あっ、そっか、むつには半無理やりヤられたんだっけ?」
美樹「…何?」
美樹が不審げに眉を寄せ、美樹の得意げな声のトーンが曇るほど、修二は仮面の笑顔が益々ニッコリする。
修二「いやね、むつに強引に行為におよばれたんじゃ大変だったんだろうなって思って、出血とかしたんじゃない?」
美樹「……………別に怪我したとかじゃないから」
修二「そっか、でも痛かったろ?切れたりしてないか心配だよ、薬とか買ったんなら、むつに請求するといいよ」
美樹「………何が言いたいの?」
険しい表情の美樹に、修二はニッコリ微笑んだ。
修二「むつはさ、僕が筆下ろししてあげてね、〝僕としか〟セックスの経験がないんだ。むつには、〝後ろ〟でするのがセックスだって教えたから、むつはアナルセックスしか知らないから、いきなりヤられてビックリしたかと思って」
美樹「…………」
むつ「…」
突然放り込まれた嘘。俺はうつむいたまま、修二の言葉に耳を傾ける。
修二「女の子の〝後ろ〟にいきなり突っ込もうとするなんてビックリしたよね?しかもシャワー入らなかったってことは準備無しにシたってことでしょ?」
美樹「!、………、………、………ふっ。
引っ掛けてるつもり?むつ君とは普通にシたよ」
修二「ふふッ♪普通に?」
美樹「………」
駆け引きなのかと疑った美樹。しかし、ニコニコしている修二の顔から心理は読み解けるはずがない。
修二「普通にできるのかなぁ?」
美樹「……」
修二「そもそもさぁ、僕ちゃんはむつとずっと一緒にツルんでて、記憶無くしたなんて見たことないんだよね」
美樹「……は?一緒にいない時だってあるでしょ?」
むつ(…しゅう…じ?)
美樹の話しに、ずっと相槌打っていたはずの修二が、どんどん美樹の表情を険しくさせる。得意げな耳障りな声もついに消えた。
修二「それに、お酒も缶で4杯以上飲んだの見たことないし」
美樹「!」
修二「むつはね、4杯以上飲んだら確実に寝ちゃうんだ。しかも、寝たら起きないタイプ。あまり強いほうじゃないから、日本酒なんか飲めないし」
美樹「……私も飲んでたもの、正確な本数とか何飲んだかなんて覚えてないって言ったでしょ?それに、むつくんは起きたの、起きて私を襲ったの。あんた、私を引っ掛けようとしてるの?呆れた」
修二「肩にもたれて眠たそうにしてたんでしょ?そんなになるまで飲んで勃つかな?それにむつは、キスはディープキスよりフレンチキスの方が好きなんだ、酔った時は大体小鳥みたいに可愛らしいのばっかり好んでするよ」
美樹「ッ!あんたたちのホモ事情なんて知らないわよ!この後に及んでむつが私を襲ってないって言いたい訳!?信じらんない!浮気を信じたくないからって責任逃れする方法を探すために私に喋らせて、綻びを探そうとしたの?最悪!」
修二「まぁ、そうだね、なんかボロでも出すかと思ったよ。でも無理そうだね。でもさ、一個疑問があるんだ」
美樹「は?」
修二「むつの恋人が僕だってどうして分かったの?」
美樹「そんなのむつ君から聞いたに決まってんじゃない」
修二「…眠ってるむつの寝言?」
美樹「ッ違うわよ」
修二「むつが僕の名前だけ教えるなんて変なんだよね」
美樹「…」
美樹が不審な目でマキを見る。マキはニッコリ微笑んで手を振った。
美樹が修二の言った意味に気がつくわけない、俺は、修二と華南と付き合ってる。それは口が裂けても言ってないと誓える。だから最初に美樹が修二が恋人だと知ってたことに驚いた。
ーバン!
美樹は俺たちを睨みながら、テーブルを叩きつけて立ち上がる。
美樹「ちょっと!変なこと言っても騙されないわよ!事実を見なさいよ!引っ掛けでも無駄だって言ってるでしょ!あんたは浮気されたのよ!いい加減諦めなさいよ!」
修二は、すごい剣幕の美樹に向かってニッコリ微笑み言った。
修二「ああ、そうそう、僕ちゃんずっと言いたかったんだけど。美樹ちゃんさ〝浮気〟の意味知ってる?」
美樹「は?浮気ぐらい知ってるわよ!」
修二「浮気ってね、
〝浮ついた心〟
のことを、指すんだよ」
美樹「…」
修二「むつの記憶が無い時間がどうだったかなんてどうでもいい。
むつのためには潔白を証明したほうがいいんだろうけど、あの日から時間が経ち過ぎて、むつの潔白は証明できないだろう。でも、別のことは証明できる。だってあまりにもむつらしくない事ばかりだ」
修二の顔から笑顔が消えて、明らかな敵意を美樹に向けた。
奏一さんにそっくりの、他を圧倒する片鱗を持った静かで鋭いその眼差し…
美樹「………………………」
マキ「♪」
むつ「………しゅ…じ…」
修二「だって、むつは浮ついたことなんか一度もないし、嘘は好きじゃないし隠し事はできないし、ハッキリしないことが大嫌いで誰より真っ直ぐな男だから、〝浮ついた気持ち〟で君を狙うなんてあり得ない。君に恋するなら、むつは僕にハッキリそう言ってからするはずだ。目を見れば分かる。むつは今も〝心の浮気〟なんかしてないし、君の話しを聞く限り、君がむつを好きだったという要素は皆無だ。これ以上むつを侮辱するなら、〝俺たち〟が黙っちゃいない」
美樹「…、」
修二「むつ、帰ろう」
修二は、あのいつものほころんだ柔らかな瞳で
優しく微笑んだ……
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