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25 小舅vs恋人3
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蒼はむ~っとした。
「そう怒らない、怒らない。蒼は、結構怒りんぼだもんね」
苦笑して、栄一郎は関口を促す。
一人で怒っていると、いつのまにか、自分は玄関に取り残されている。
「ちょっと!」
お客様の関口は待遇がいい。
「蒼、おいてくよ」
って。
もうおていかれいてます!と思う。
ぷりぷりしながら居間に入ると、エプロン姿の母親がいた。
病院なんかよりも、ずっと顔色もいい。
こうしていると、長期の入院をしていたなんて、本当に思えない。
「蒼、お帰り」
「母さん」
今までの面白くない思いは、一気に吹き飛ぶ。
こんな姿の母親を見られだのだ。
自分は帰ってきてよかったと思う。
「もう、いいの?平気?」
「ええ。心配はしないで。もう調子もいいの。お薬はちゃんと続けているし。それよりも、ここの場所に帰ってこられたことが嬉しいの」
彼女の笑顔は陽だまりみたい。
そんな空の笑顔に釣られて笑う蒼の笑顔も。
二人の様子を眺めていた関口は、瞳を細める。
蒼は暖かい。
春のお日様みたいに笑う蒼が、関口にとっては救いだ。
「今日は、蒼が圭君を連れてくるって言うから、空は朝から張り切っちゃって。初めてキッチンに立ったんだよ」
栄一郎は笑う。
「お料理なんて、本当に久しぶりだけど。蒼に食べてもらいたいし」
もう時間はお昼だ。
栄一郎は出来上がった料理を運んでくる。
「いつもはね。今まで来てもらっていた家政婦さんに頼んでいるのだけど。そろそろ自分でもやってみたいって言っていたし。まあ。おれも手伝わされているけどね」
そっか。
二人で。
蒼は嬉しい。
空がこの家にいた頃の栄一郎は、まだまだバリバリ働いている医者で。
自分の病院が休みの日は、大学病院に行ったりしていた。
仕事ばっかりで、空の家事を手伝うなんてありえない話だったが。
今の彼には余裕がある。
病院は陽介や他の医者に任せていて、自分は管理に回っているのだ。
こうして、空のために時間をとってくれている彼に感謝だ。
空が自宅での生活を楽しく送っているのは、彼のおかげだろう。
空を幸せに出来るのは。
自分ではなく、栄一郎なのだとはっきり自覚する。
でもそれは寂しいことなんかじゃなくて、本当に望ましいことなのだと思う。
「蒼も手伝って」
「はい」
栄一郎をソファに座らせて、蒼は席を立つ。
「後はおれが」
「蒼?」
「関口と話してやって」
「いや、おれも手伝う」
ソファから立ち上がる彼を栄一郎が止める。
「今日はお客様としてお招きしているのだ。いいよ」
「でも」
「また今度来たときは手伝ってもらおうかな」
苦笑する栄一郎に、関口は腰を下ろす。
「蒼、これ切ってもらえる?」
キッチンから聞こえてくる親子の会話。
「まあ、蒼って、お料理上手なのね」
「普通だって」
包丁の音に栄一郎は笑って関口を見る。
「蒼は料理上手だね」
「ええ。どこに行っても主婦には喜ばれます」
そういえば、柴田の妻にも重宝されているのを思い出した。
「なんだか。いつのまにか、子どもっていうのは独立していっちゃうものだな。最近、本当にそう思うよ」
「お父さん?」
「蒼は、本当に小さかった。あの体格でしょう?歳よりも小さく見えた」
「ええ」
顔つきも童顔だから。
自分よりは年上だとは分ったけど。
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