アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
28 新星現る6
-
一方、その頃。
星音堂も昼食タイム。
お弁当を広げて、吉田はぶうぶう文句を言う。
「蒼のやつ!急に休むなんて……ズルに決まっていますよね!」
「どうせデートだろうよ。関口と」
星野は、来月の文化祭の企画書を見ながら、菓子パンを頬張っていた。
「おい!それよりも、とうとう着ぐるみ隊決定かよ?」
顔をしかめて、嫌な気持ちをアピールする。
吉田も「そうそう」と話に乗ってきた。
「らしいですよ。顔が出なくていいって、課長も気に入っちゃっているみたいで……」
自作のお弁当の卵焼きをフォークで突き刺して、口に放り込む。
吉田は、おしゃべりをしていても食事はきっちり摂っている。
器用なことだと星野は思った。
パンを食べ終え、煙草に火をつけると、吉田に怒られた。
「課長がいないからって!匂いでばれますよ」
「いいじゃん。お前はいつからそんな生意気になったんだよ~。先輩のおれに意見するなんて10万年早いっつーの!」
「ダメなものはダメなんですからね!」
「最初の頃は、可愛い子だったのにな。お前も。今ではすれた近所のクソババア化しやがって」
「本当に星野さんは口が悪いんですからっ!」
むんむん怒りながら食事を進めていると、珍しい来客があった。
「こんにちは~!」
「ん?」
二人は顔を見合わせる。
この声は噂のあの人では……。
「こんにちは」
もう一度、明るい声が響いて、ひょこっと顔を出したのは関口だった。
一瞬ぎょっとしてしまう。
「関口……」
「蒼、います?」
「……」
ぽかんとしている二人を余所に、関口はにこにこして入ってくる。
「今週は、珍しくツアーの中休みなんですよ。暇になっちゃって……。あれ?蒼は?」
はっとした二人は咄嗟に「買い物に行かせた!」と声を合わせて言った。
「え。一緒にご飯食べようと思ったのに……」
考え込んでいる関口を、二人は固唾を飲んで見守る。
変な汗が背中を伝う。
「いつ、帰って……」
関口が言い終わらないうちに、星野が声を上げる。
「夕方だ!」
「え?そんなに……」
そう言い掛けて関口は口を閉ざす。
あまりにも二人は真剣な瞳だ。
なんだか、睨まれているような気迫がある。
変な違和感を覚える。
「分かりました。諦めます」
「そうしてくれッ!」
「じゃあ……」
「さよならッ!!」
追い出される形で事務室を出された。
関口は首を傾げてみせたものの、そのまま駐車場のほうに歩いて行く。
その後姿を窓辺で監視し、姿が見えなくなるのを待ってから二人は大きくため息を吐いた。
「は~。危なかったですね。星野さん……」
吉田は大きく息を吐いた。
「生きた心地がしなかったぜ~」
「あれでよかったんですよね?」
嘘をついたことに対して吉田は困った顔をした。
「デートじゃなかったんだ……」
「浮気……?まさか!」
妄想に足を突っ込んだ吉田は「あわわわわ」と言葉を濁した。
「恋人に秘密の欠勤……。それ以外になにがあるっていうんだよ?」
星野もむむっと眉間に皺を寄せた。
「蒼のやつ。なかなかやるなあ……」
「きっと、この前の男ですよ!」
「この前の?」
「ほら!職場を覗き見していた!」
宮内のことである。
彼は関口の友人の桃と付き合いをすることになったので、蒼とは全く関係がない。
しかし、話はどんどん大きくなっていく。
事情も知らない吉田の妄想は、留まることを知らないようだった。
そのうち、蒼は昼のメロドラマの主人公にのし上がって言ったことは言うまでもない……。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
211 / 869